文・撮影 ちょい旅ライター 水田ウタコ
1日8,000歩以上歩こうと決めている水田ウタコが、北近畿周辺の施設や飲食店に出向いて、見たこと、感じたことを自由につづる「ちょい旅」紀行。第3回は丹波遠征だ。南インド料理「ドーサ」を母子で楽しんだあと、気になるスポットを探索した。(ちなみにこの日のウタコの歩数は8,576歩)
丹波に惹かれる2021年夏
某日、ふらりとFacebookを見ていたら、心臓にずばっと突き刺さる魅力的なイベントが飛び込んできた。
【要予約】2日間限定!本格的な南インドの軽食『ドーサ』を味わってみませんか
わたくし、スパイスカレーやエスニック料理が大好物。大阪や京都などの大都会に繰り出す際には毎度スパイス補給するほど。福知山のスパイスカレーの名店「ガルミー」は2019年12月の開店以来、月に一度のペースでスパイス補給できる本当にありがたい存在。
「わたしの血はスパイスでできているの」と言っても過言ではないと自負する私ですが、「ドーサ」は初耳。ドーサって何……? 気になったその刹那、即予約。今回は辛いのが得意な次男を道連れに、いざ丹波へ!
丹波で南インドにプチトリップ
向かったのは兵庫県丹波市柏原町の「田庭-taniwa-」。
田庭は「0歳から100歳超までが触れ合う多様性なコミュニティセンター」というコンセプトのもと、いろんな人が集い、学び、楽しめる場所だそう。
一見、なんの変哲もない民家なんだけど、この小さな橋を越えていくだけで、別の世界へ踏み込めそうな気分。
「お邪魔しまーす」と玄関から声をかけ室内へ。いたるところにカラフルな布がデコレーションしてあり、一気に心がはずんじゃう。奥の部屋はキッズたちが好きそうなおもちゃが所せましと並んでいて、対象年齢からちょっと外れた次男も「お……っ、ちょっと遊んでくるか……」と没頭。まんざらでもなさそうな様子。
今回の「ドーサを食べる会」の参加者は、私と次男含めて5名。ひとつのテーブルを囲みゆるゆるとお話していたら、ドーサ登場!
ドーサとは、お米と豆のペーストを発酵させたものをクレープ状に薄く丸くして焼いたもの。これにカレーや野菜などを巻いて食べるのが、南インドやスリランカではメジャーな食べ方なのだそう。
今回のメニューは
・ドーサ
・焼万願寺唐辛子のチャトニ
・パクチーとハーブのチャトニ
・トマトのチャトニ
・ナスのキチャディ
・ダルコフタカレー(豆とじゃがいもの団子入り)
というラインナップ。
まずはドーサを小さくちぎって口の中に入れてみる。んんんん、食感はもちもち、味わいは発酵を感じさせる酸味が少々。正直なところ、これ食べきれられるかな……と目を見合わせる私と次男。 暗雲が立ち込めたものの一転、ドーサをチャトニやカレーと一緒に食べたとたん、不安が杞憂に終わるとは!
チャトニとはいわゆるチャツネで、タレとかソースみたいな意味合いがあるとのこと。 さまざまな味わいのチャトニをドーサで包んで食べると、あら不思議。ドーサ特有の酸味がまったく気にならないばかりか、ちょっとしたアクセントになっていてチャトニを引き立てる。まさに縁の下の力持ち。ドーサがそれぞれのチャトニの味わいを底上げしてくれるのだ。
パクチーが苦手な次男には、代わりにトマトのチャトニを出してもらう。このトマトチャトニ、次男が「これやばい、世界一おいしいかも!」とまさかのカレーオリンピック金メダルを進呈しちゃうくらいの大金星。私もひとくちもらったけど、ケチャップの甘味にスパイスの深みが加わって、確かに今まで出合ったことのない味わい。奥が深い。
気づけばドーサのおかわりもぺろりと平らげ、内臓はすっかり天竺。
ふっと一息ついたところで、お隣から流れてくるかぐわしいチャイの香り。反対の隣側からはぼそっと「僕もチャイ飲みたい」という次男のつぶやき。す、すみません、チャイひとつください!!
南インドのトラディショナルな飲み方として教えてもらったのが、カップに入ったチャイを高い所からソーサーに移し替え、またソーサーのチャイをカップに移し替える……これを繰り返し、あつあつのチャイを冷ますのだそう。
周りのみなさんが苦戦する中、次男はひょいひょいと高い位置から慣れた手つきでチャイを注ぐ。人の十八番ってどこに潜んでいるかわかりませんね。
田庭では、今回のドーサを食べる会のように、南インドのさまざまな料理を楽しめる体験イベントを、手を変え品を変えて10月いっぱいまで開催するとのこと(要予約)。
また、裏庭でドイツの修道院風の薬草園を作りながら自然療法について学ぶ会も発足したんだとか。なかなか海外旅行に行きづらいこのご時世、こういったマニアックな世界を味わえる機会って本当にありがたいし、心躍る! 今後もFacebookをチェックしよう。
南インドの次はスリランカへ
丹波市の魅力を発信する「丹波しるみる」を運営する、自称「丹波⇆フィンランド大使」のカヨちゃん。
彼女に「丹波のオススメの場所教えて!」と尋ねたところ、さすが感度の良いアンテナをもつだけあって、センスのよいお店を何店舗か教えてくれました。どれもこれも気になる中、はじめて存在を知った「ホノラトカティールーム」へ。
ここはムレスナティーという最高級茶葉の卸販売をしているお店。
ドアを開けると圧巻。壁一面に紅茶、紅茶、紅茶。店内にはたくさんの種類の茶葉が所狭しと並べられていて目移りしちゃう。さまざまなお花のイラストで彩られたキューブ形の紅茶には、葉ごとにそれぞれメッセージが印字されていて、プレゼントにとても喜ばれそう。
なにより素晴らしいのが、象印とコラボした給茶スポット。それは、マイボトルを持参すると日替わりでオススメのお茶を入れてくれるサービスだ。
うだるような暑さの中、満杯で持参した水筒はこの時点ですでにすっからかん。そこで水筒にお茶を補給。
この日のメニューは「水出しレモンアールグレー」。レモンの酸味とアールグレーの芳醇な香りがマッチしてゴクゴク飲めちゃう。普段なかなか選ばないお茶との出合いもステキね。
気になっていたリサイクルショップへ
国道176号線を通るたびに気になりつつも、いつも通り過ぎてしまっていたリサイクルショップ「サンコードー」。
柏原の街なかにあるおしゃれなセレクトショップ「三光堂」とは綴りは違うが、同じ名前。ご夫婦でそれぞれ経営されているそう。
店の外には家電や自転車がたくさん。建物に一歩に足を踏み入れると食器、家具、ゲーム機にレコードなど、さまざまな商品が並んでいる。整然としているのでとても見やすいし、清潔にしてあるので安心感がある。
レジ前の一角には古道具コーナーが設けてある。レトロな食器、一輪挿しに使えそうなガラス瓶、アルミのお皿など、生活のアクセントになりそうな雑貨たち。見ているだけでもイメージが広がる素敵な品の数々。
一通り見て回り、今日のところはおいとましようかなと車に戻ろうとしたその時、お手洗いを借りていた次男が興奮して近づいてくるではないか。「お母さん、これ買っといた方がええと思うんやけど!!」
まだ値づけもされてないであろう、今入荷しましたといわんばかりに道端にぼんっと置いてあるソリに一目ぼれの模様。
「これで雪山すべるとか最高やん!」と矢継ぎ早にプレゼンかましだす次男。確かに子ども用のソリはもうちっさくなってしまったもんね……と家族会議の結果一台購入。
こんな暑い夏まっさかりにソリを買っちゃうのも一期一会、リサイクルショップのおもしろさなのだ。
「みわかれ」とは何ぞや?
続いて向かったのはこちら、水分れ公園にある「氷上回廊水分れフィールドミュージアム」。
水分れと書いて「みわかれ」と読む。ここは降ってきた雨が分かれる場所。具体的にいえば、一方は加古川を経て瀬戸内海へ、もう一方は由良川を経て日本海へと水の流れが分かれる分水界なのだ。そしてこの丹波の地は「本州一低い分水界」なんだそう。
本州一低い分水界にある公園に建てられたのが水分れフィールドミュージアム。5年ほど前に来たときは「市立水分れ資料館」だったけど、2021年3月にリニューアルオープン。こんな風に生まれ変わったなんて知らなかった。
入ってそうそうになにやら楽しそうなコーナーが。
固まりやすいけど手につかない、簡単に形を固定できるキネティックサンドという不思議な砂が敷き詰められた箱。この箱の上に、我々が今いる丹波の地形がプロジェクションマッピングで映し出され、それに合わせてキネティックサンドで高低差を作ろうというもの。
自称地理好きの私。丹波の地形はよく知らないけど、山でしょ、川でしょ……と次男とタッグを組み、砂を盛ったり掘ったりしながら地形を作っていく。
世界を創り出しちゃってる錯覚に陥りながら創り続け、カウントダウンののちに再現度が表示される。
じゃんっ!!!
想像だにしなかった点数にあっけにとられる我々。ちゃんと勉強させてもらいますとハチマキを締め直し、いざ展示室へ。 入ってすぐに出迎えてくれたのがドローンで撮影した丹波の四季折々。悠々と旅する鳥になった気分を味わい、次男ともども見入ってしまった。丹波って美しいところですね。
地球の凹凸を触って学べたり、ここ丹波の水分れがいかに奇跡的な場所なのか、イラストでわかりやすく説明してあったりして、入館から10分も経たないうちに「水分れ、すごない??」と語彙力を失って感動する親子。
そんなに広くはないので、子どもも飽きずに丹波地方の地形の特徴、生き物や植物の生態などを学ぶことができる。
ちょうどこの時は2階で夏季特別展「魅惑のいもむし・けむし展」が開催中。普段じっくり観察することのない「いもむし」と「けむし」について、かわいらしさとおどろおどろしさとのはざまで奇声を発しながら鑑賞。変な汗かいたけどおもしろかった……。(2021年8月29日まで開催)
茶屋で江戸時代にタイムスリップ
「水分れフィールドミュージアムの隣に素敵なお茶屋があるのよー」と、これまたカヨちゃんに教えてもらい、楽しみにしていた「水分れ茶屋」へ。
木々が広がる公園に向かって客を待つお茶屋。外と中を隔てるドアなどなく、まさに江戸時代の旅人がふらっと立ち寄って休んでいく、そんなたたずまい。
畳敷きのスペースに腰をおろし、注文したドリンクを待ちながら、店主セレクトとおぼしき書籍をぱらぱら。吹き抜ける風、子どもたちの笑い声。
外で子どもたちを放牧させながら休憩するもよし、一緒に本を読むもよし。こんなほっとするお茶屋さんがあるとは、なんて素晴らしい場所なのでしょう。
アイスコーヒーは、苦みが強めの豆をチョイス。暑い夏にがつんとくる飲み心地がとても合う。次男は水分れ茶屋の自家製レモネードを炭酸で割った「自家製レモンスカッシュ」(夏季限定)。これまた夏にぴったりのさわやかさ。丁寧に淹れてもらったコーヒーを口にすると、本当に心が和らぎます。
最後はギリシャ神殿!?
今回の「真夏の丹波ふらり旅」の締めくくりはこちら、丹波市立植野記念美術館。
のどかな田園風景に突如現れる巨大なギリシャ神殿。この景観、初めて見たときは度肝を抜かれたものですが慣れって怖いですね。
広々とした階段をのぼり、2階の受付へ。ここから見下ろす丹波の田園風景と加古川の眺めも良いのです。 今回の企画展は「宮西達也Newワンダーランド展 ヘンテコリンな絵本の仲間たち」
絵本作家宮西達也さんの原画展。映画にもなった『おまえうまそうだな』という絵本が有名ですが、それしか知らない母とは対照的に、次男は「あれも知ってる」「これも読んだわ」とテンション高く見て回る。膨大な量の絵本を作られているのですね。
原画やスケッチの展示だけでなく、館内のいたるところにキャラがひょっこりと飛び出してきて絵本の中に迷い込んだみたい。
都会と比べたら美術館やギャラリーが圧倒的に少ない北近畿だけど、ここのようにいろんな企画展がまわってくる美術館の存在はほんとうにありがたいもんです。さまざまな感性に触れさせてくれる場所と機会は、大人にも子どもにも重要!
知っているようで知らなかった丹波のあれこれを学べたリトルトリップ。このあたりには、まだまだ知らないことがたくさんあるはず! 今度はどこを駆け抜けようかしら。
【今回、ウタコが訪れた施設・店のデータ】
施設名 | 田庭-taniwa- |
住所 | 兵庫県丹波市柏原町東奥228 |
https://www.facebook.com/taniwa.tamba/ |
施設名 | ホノラトカティールーム |
住所 | 兵庫県丹波市柏原町柏原145 |
Tel | 0795-72-0017 |
https://www.facebook.com/HONORATKATEAROOM/ |
施設名 | サンコードー |
住所 | 兵庫県丹波市柏原町柏原3080-1 |
Tel | 0795-72-0003 |
定休日 | 火曜 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
施設名 | 氷上回廊水分れフィールドミュージアム |
住所 | 兵庫県丹波市氷上町石生1155 |
Tel | 0795-82-5912 |
開館時間 | 10:00~17:00 |
休館日 | 月曜日 |
URL | https://www.tamba-hikamikairo.com/fieldmuseum/ |
施設名 | 水分れ茶屋 by Amhara Coffee Stand. |
住所 | 兵庫県丹波市氷上町石生526 |
営業日 | 土日祝のみ |
営業時間 | 10:00 ~ 16:30 |
https://www.facebook.com/miwakare.chaya |
施設名 | 丹波市立植野記念美術館 |
住所 | 兵庫県丹波市氷上町西中615−4 |
Tel | 0795-82-5945 |
開館時間 | 10:00~17:00 |
【取材協力】
丹波しるみる
https://www.instagram.com/tambashirumiru/
【今回のお小遣い】
<ドーサを体験する会>
一人 1,000円×2
チャイ一杯 300円
<ホノラトカティールーム>
給茶(500ml) 300円
<氷上回廊水分れフィールドミュージアム 入館料>
大人:210円
小学生:100円
<水分れ茶屋>
急冷ハンドドリップ(Iced) 470円
レモンスカッシュ 470円
<丹波市立植野記念美術館>
入館料
大人 310円
小学生 100円
生きることは旅すること。ハイボール片手に、「通い猫」と「3人組」を愛でながら生きる会社員兼おかん。京都府綾部市在住。
https://www.instagram.com/utaco_1211