文・撮影 ちょい旅ライター 水田ウタコ
1日8,000歩以上歩こうと決めている水田ウタコが、北近畿周辺の施設や飲食店に出向いて、見たこと、感じたことを自由につづる「ちょい旅」紀行。第5回の舞台は兵庫県朝来市。この地域にしかないオンリーワンな店を巡ってきた(この日はなんと15,117歩も歩いていた)。今回はその前編だ。
国道9号線を西へ向かう
ある秋の日。
うららかな陽気にまどろみながらぼけーっとしていたところ、ラジオから流れてきたのは Pet shop boysの「Go west」。
ゴーウェスト~、ゴーウェスト~と聞いていたら、なんだか西に行きたくなってきた。
「そうだ、西へ行こう」 ということで、国道9号線をゴーウェスト~。
福知山方面から9号線をゴーウェストすると、案内標識に「(至)鳥取」の文字が。9号線を西へひた走ると砂丘に着くのね……と旅情がむくむく。 今回は鳥取までは行かず、福知山・旧夜久野町を越えてすぐのところにある兵庫県朝来市をぶらぶら。
まずはランチから。朝来市和田山町の「炭火焼き和牛ハンバーガー店 MOMIJI」。
ぱっと見るだけで陽気で楽しそうなアメリカンな雰囲気がビンビン伝わってくる外観。 そしてドアを開ける前から、鼻孔にギューンと攻め入ってくるお肉の匂い。もうおなかがぎゅうぎゅう鳴ってしまう(牛肉だけに)。
席に着き、オーダーを頼む。
この店の二大メインは、もみじバーガーと華咲もみじバーガー。
もみじバーガーは但馬経産牛100%のミンチパティ、いわゆるハンバーグが挟まったハンバーガー。華咲もみじバーガーは但馬経産牛のステーキ、一枚肉がどーんと挟まれたハンバーガーだ。 ミンチパティかステーキか。時限爆弾の赤いコードを切るか青いコードを切るか運命の決断のごとく、うーーんと悩んだ結果、わたしはもみじバーガーのプレーン、長男は華咲(はなさき)もみじバーガーのベーコンチーズを注文。
MOMIJIのハンバーガーの売りは「NOマヨネーズNOバーベキューソースNOタルタルソースNOマスタード」。
なんのタレもソースもついていないから、味のごまかしがきかない。シンプル過ぎて不安になるくらいの素材で真っ向勝負するハンバーガー。 なのでチーズやベーコンなどのトッピングで味の変化を楽しむのがおすすめ、とのこと。
私は初めて来た店では王道のメニューを頼んでそのお店の味のど真ん中を感じたいので、プレーンにしたところ、店主さんに「うちソースついてないけど大丈夫?」「本当にシンプルなハンバーガーですけど大丈夫ですか??」と何度も確認してくださいました。お心遣い、痛み入ります……。
各席に置いてある「ハンバーガーの食べ方指南」を①から⑤まで何度も何度も熟読。カラフルなイラストで説明してもらうことで、ハンバーガーにかぶりつく我々の未来が想像ついちゃうこのフロー。もうイメトレは万全やで!
このメニューのカバーも黒皮がシックで重厚感があって素敵だわ……とうっとりしながらパラパラとめくっていたら、最後のページには、食材の生産者・提供者、装飾品や雑貨の製造者・提供者が明記されていた。
MOMIJIを作り上げる店内に散りばめられている装飾品の数々について、「これはこの方の仕事なんですよ」と、こそっと耳打ちしてもらっているよう。お手洗いに置いてある植物も、とてもセンスがよいな……と心では思うけれど、わざわざお忙しいお店の方に聞くほどではない。けれども、これを見ると一目瞭然というのはとてもありがたい。 植物のお店(木まもり)はこの日は行けなかったけど、「いつか訪ねたいお店メモ」に追加しました。
メニュー読みこみながらも、我々の耳は厨房から聞こえるお肉を焼く音でギュンギュン刺激され、いやがおうにも期待はふくらむ。10分ほど待ったところで、まずは長男の頼んだ華咲もみじバーガーが到着。
形のよいハリのあるバンズからはみ出した巨大ベーコン。焼けたバンズの甘い香りと荒々しさも感じられるパンチの効いた但馬牛のステーキの香り。とろけ落ちるチーズ、したたる肉汁。五感で猛攻撃を受けた私。あとはもう大口開いてかじりつくしかありません。
ふんわりとしたバンズに挟まれた、しっかりとした食べ応えながらも簡単に噛み切れるお肉の存在感。そこにアクセントとして挟まっているレタスのシャキシャキ感。細胞の一つ一つが歓喜の舞を踊っているのが感じられます。ああ至福。 長男も一口かじるごとに「ふぅぅぅ」とにやけ顔が止まらない。そうなっちゃうよね。
私のプレーンバーガーも到着。 NOソースだからこそわかるバンズの甘味と肉の旨味、ジューシーすぎる肉汁の海に溺れてしまいそう。
このレタスもお座布団のように四方の端がぴっちり折り目正しくたたまれている。ビジュアルの上品さ、そして噛んだ瞬間水分が飛び跳ねるようなみずみずしい歯ごたえに歓喜乱舞。来世もしもレタスに生まれ変わるなら、MOMIJIのハンバーガーに挟まれるレタスになりたい。
ハンバーガーの美味しさもさることながら、我々の共通認識は「サラダのドレッシング美味しすぎる」でした。サラダだけ大盛りにしてほしいくらいの美味しさ。衝撃的。来世もしも赤玉ねぎに生まれ変わるなら、MOMIJIのサラダになってドレッシングをかけられる赤玉ねぎになりたい。
美味しくいただき、ごちそうさまでした~とお店を出ようとしたそのとき、店長さんに「手形は押されましたか?」と声を掛けられる。 店の外壁にたくさん押されていた手形は、どうやら来店してハンバーガーを食べたお客さんたちが押していったのだそう。初来店時は手形を押し、2回目はその手形に日付を書く……とMOMIJIに来た思い出がお店に残っていく。また来たくなっちゃう小粋な演出。
手が汚れちゃうからどうしようかな……とちょっと心配してたけど、光の速さでささっとビニール手袋を出してくださいました。手袋の上から赤白どちらかのペンキをぽんぽんとつけてバンッと手形を押すシステム。
手形を押せる場所が少なくなっている壁を見ると、たくさんの方がここを訪れたことがわかる。
押した場所を忘れないうちにまた行きます。2021年度不肖ウタコが食べたハンバーガーコンテスト、ぶっちぎりの優勝です。おめでとうございます。
魅惑的な響き「工場直送ポテトチップス」
さて、我々はMOMIJIから車で10分ほど南へ走り、雲海で有名な竹田城跡を右手に見ながら「ポテチの直売所」へ向かった。
懇意にしている蕎麦屋の大将とポテチを食べながら話していた時、「これ、朝来にポテチの直売所があってそこで買ってきたんや」との発言が。 「ポテチの直売所」というパワーワードを聞き逃さない私。すぐさまケータイを取り出し場所を調べたところ、平日しか空いてないことが判明。行けるチャンスを虎視眈々と伺っていましたが、今がその時!
「わさビーフ」で有名な山芳製菓の工場のすぐそば。コンビニの居抜きっぽい佇まいの店舗に「工場直売」のノボリが並ぶ。
店内の一面に様々な種類のポテチがずらり。右見ても左見てもポテチ。目に映るものすべてがポテチ。 「わさビーフ」といった有名どころから、「なにこれ、こんなん見たことない!」というレアものまで。ポテチの世界は日本海より広い。
その時々でラインナップは変わるそうなのですが、賞味期限の近いものは半額以下の50円というお得価格で販売。
毎日毎日カウチでポテチを食べる生活ではないけれども、お酒のアテに、こどものおやつに、こんなにバリエーション豊富なポテチが家にあるって、なんという安心感なのでしょう……。
思わずあれもこれも、おおこれは3つ買うか! と、どんどこカゴにほりこんでしまう。だって安くて珍しくて(たぶん)美味しいんだもの…。
わたしは化学調味料無添加のダシのきいたポテチを、娘には甘めのバター味を、弟とお父さんは辛いのが好きなので激辛ポテチを……と、ほいほいと9袋購入。なのにお会計600円! お得~。
抱えきれないポテチに埋まっちゃう長男。 これぞ子どもの夢……。
(後編へつづく)
【施設データ】
店名 | 炭火焼き和牛ハンバーガー店 MOMIJI |
住所 | 兵庫県朝来市和田山町土田27−2 |
TEL | 079-672-3900 |
定休日 | 月曜 |
営業時間 | 11:00~19:00 |
HP | https://humbergermomiji.jimdofree.com |
Instagram | https://www.instagram.com/momiji_53/ |
施設名 | 山芳製菓 ヤマヨシ工場直売店 |
住所 | 兵庫県朝来市伊由市場569-2 |
営業時間 | 9:00~12:00 13:00~15:00 |
定休日 | 土曜・日曜 |
【今回のお小遣い】前編
<炭火焼き和牛ハンバーガー店 MOMIJI>
もみじチーズバーガー プレーン 900円
華咲チーズバーガー ベーコンチーズ 1,250円
<ヤマヨシ工場直売店>
お得なポテチいろいろ 600円
生きることは旅すること。ハイボール片手に、「通い猫」と「3人組」を愛でながら生きる会社員兼おかん。京都府綾部市在住。
https://www.instagram.com/utaco_1211