ほぼ毎日ランチ部 カフェ&ベーカリー ふくたんコラム

circle coffee(サークルコーヒー)【福知山/カフェ&ベーカリー】インテリアショップに併設する居心地のよいカフェ

取材・文・撮影 倉田 楽

【2022年4月某日のランチ】
Circlecoffeeの
クロックマダム 935円(税込)
アイス添えフレンチトースト 825円(税込)

異国にいるような気分になる
眺めのいいカウンター席

不定期連載の「ほぼ毎日ランチ部」、略して「ほぼラン」は、オレ(倉田楽)が、ある日に食べたランチを紹介するランチエッセイだ。
「店に行った。食べた。おいしかった」といった空疎で無内容な記事ではなく、あわよくばその店や店主の魅力も掘り下げたいと欲張っている。ひとつでいいから”発見”を伝えたいとも。

4月某日のランチタイムに「circle coffee」(福知山市岩井51)を訪れた。circle coffeeは、インテリア用品・生活雑貨・グリーンのセレクトショップ「インテルナモリイ」に併設するカフェ。
モリイがプロデュースしているだけあって、エクステリアから店内のインテリア雑貨に至るまでトータルでコーディネートされている。オレには、すこぶる居心地のよい空間だ。

国道176号側からのアプローチ。店名を記す木版は目隠しの役割も果たしている。
庭の向こうに見えるのがcircle coffeeの店舗。右手のドアが入り口。
庭には黄色いタープが張られ、その下にテーブルとイスが置かれている。ここでお茶を飲むこともできる。
店に入ると木製の棚が出迎えてくれる。

天気のよい日にこの店にふらっと訪れ、国道側に設けられたカウンター席に座る。そこからの眺めは、アメリカ西海岸の景色に見える。オレのアタマのなかには、景色をウェストコースト風に加工するアプリがインストールされているのだ。

国道側のカウンター席から庭を見るとこんな世界が広がる。
テーブルの選び方と配置、グリーンを置く場所にセンスが感じられる店内。

目玉焼きがのるとマダム、
のらないのがムッシュ

「circle coffee」はモリイの改装工事に伴ってしばらく休業期間に入っていた。営業を再開したのは、2022年2月19日。これを機にランチメニューも変わった。

2022年4月某日の「ブレッド・メニュー」(イートインのみ)は、クロックマダム(税込935円)、アイス添えフレンチトースト(税込825円)の2種類のパンランチと、レモンドリア(税込935円)だった。

そのなかから、クロックマダムを注文した。
「ところで、クロックマダムって?」
カフェメニューとフランス語とマダムに疎いオレは無学をさらしつつ、インテリナモリイのスタッフである森本さんに聞いた。

「クロックマダムは、私がフランスへ行ったときに初めて知ったトーストの一種です。フランスのカフェの定番商品なんですよ」

マダムというだけあって、クロックマダムはやはりフランス生まれだったのね。少し前までオレの脳内はアメリカの西海岸の景色を見ていたが、すぐに南フランスのニースの景色に更新した。

森本さんは、カフェ料理の知識に乏しいオレにわかりやすいようにクロックマダムの特徴を説明してくれた。
「トーストに使っているのは、自家製ライ麦パンです。パンの中に手作りのベシャルメルソースが入っています。べシャルメルソースはフランス料理に使うソースで、ルーを牛乳で溶いたホワイトソースです。小麦粉と北海道よつ葉バターでベシャメルソースをつくり、ハムと一緒にパンの間にはさみます。その上からチーズをかけて焼いたものを『クロックムッシュ』といいます。当店では、クロックムッシュの上に目玉焼きを乗せて『クロックマダム』として提供しています」

目玉焼きがのっていないのがクロックムッシュ、のっているのがクロックマダムということは、ムッシュよりマダムのほうが派手できらびやかなんだな。フランス人はエスプリが効いているぜ。

森本さんの説明を聞きながら自撮りする倉田楽。被写体はさておき、どこで撮影しても絵になる店内。

店内を撮影してるとクロックマダムができあがった。クロックマダムをのせたプレートを国道側のカウンターの上に置き、その景色をぼんやりと眺める。ボンジュール、マダム。

白くて丸い皿の手前にクロックマダム。その奥にサラダ、その右手にヨーグルトが並ぶ。 と、ここで「おじさんのランチとしてはオシャレすぎる」と感じたアナタ、そのとおりだ。そのとおりなんだけど、おじさんだってオシャレなパンランチを楽しみたいときがあるのよ。

白くて丸いお皿の上に、クロックマダム、サラダ、ヨーグルトが並ぶ。
国道側のカウンターの上にクロックマダムを置く。「眺めのいいランチタイム」の始まりだ。

とろとろの目玉焼きに見つめられながら、オレはサラダから食べはじめた。サラダは、野球でいえばトップバッターだ。いきなりホームランを打つ必要はない。むしゃむしゃ。
途中経過をショートカットし、メインのクロックマダムへ。目玉焼きの表面にフォークを突き刺す。とろりと流れる黄身。液体と固体の中間にいるキミが愛おしくて仕方ない。

フォークを目玉焼きに突き刺す寸前のオレ。

中央にナイフを入れ、トーストを切り離すと目玉焼きの下に隠れていたハムが顔を出した。二等分したクロックマダムをさらに長方形に切り分け、黄身に覆われたハムとトーストの一片を口に運ぶ。

最初のひとくち。ねっとりチーズととろとろ黄身のおだやかな甘さが口のなかで混ざる。ハムの塩気もしっかり伝わってくる。さらにライ麦パンのもちっとした歯ざわりは、オレの好みの食感だ。ライ麦パン、ハム、チーズ、黄身が奏でる四重奏を味わう。ぺろり。
最後にヨーグルトでフィニッシュ。かすかな酸味と甘みに包まれ、某日のパンランチはオレの胃袋に消えた。

クロックマダムは名前も見た目もオシャレだ。でも、オシャレなだけではない。食材が味覚の層を成し、バラエティに富んだ味わいを体験させてくれる一品である。そして、日本にいながらにしてフランスの景色を脳内に映し出してくれるのだ。

フレンチトーストの
本名はパンペルデュ

後日のランチタイムに再訪し、circle coffeeのもうひとつのパンランチに挑んだ。「アイス添えフレンチトースト」だ。

ふたたび森本さんの説明に耳を傾ける。
「うちのフレンチトーストは、兵庫県芦屋市の『ビゴの店』のバタールを使っています」

「ビゴの店」といえば、日本にフランスパンを広め、「フランスパンの神様」と呼ばれているフィリツ・ビゴさんが創業した店。さらにバタールはフランスパンの一種。これはまさに「フレンチランチ大会春場所」の始まりなのだ。

森本さんは、材料と作り方まで教えてくれた。
「砂糖、牛乳、卵、バニラビーンズ入りのアパレイユ(液体状の生地)にバタールを漬け、ひと晩おきます。そのバタールをフレンチトーストにしているんです」

このフレンチトーストの上に半球体のアイスクリームとベリーミックスがトッピングされている。好みに応じて自家製キャラメルソースをかけて食べるのだ。

アイス添えフレンチトースト。写真下にあるのが、キャラメルソースが入った容器。

できあがったアイス添えフレンチトーストを見て秒速で悩殺された。バタールとアイスクリームとベリーミックスの絶妙な配色が美しいのだ。食べる前から、視覚で魅了されたオレ。

まず、アイスとベリーミックスがのっていない部分を口に運ぶ。おお、これまで食べたどのフレンチトーストとも違うぞ。ふんわりした食感のバタールの内側にまで、卵と牛乳と砂糖が混ざり合った味が沁み込んでいるではないか。バタールは、明らかに食パンとは異なる食感だ。軽く噛めば、甘さがジわ~っと口の中に広がる。4月の快晴の昼下がり、幸福感に包まれる。

ベリーミックスをのせて食べると酸味が舌の上をころがる。足し算でなく掛け算の複雑な甘酸っぱさだ。では、アイスクリームをのせて……。ひやっとした甘さが加わり、オレの口の中は、複数の甘さが同居するシェアハウスになった。うひゃうひゃ。自分を甘やかすこんな時間は誰にだって必要だ。

あっという間にぺろりとたいらげ、しばし余韻にひたった。

森本さんに感想を伝えたところ、彼女から予想もしない言葉が飛び出した。 「じつはフレンチトーストはフランスにはないんです。だからフランス生まれではないのです。いま倉田さんが食べたのは、正しくは『パンペルデュ』という名前なのです」

ええっ、フレンチトーストとフランスは無関係なの? フランスとは関係ないのに日本ではフレンチトーストと呼ばれているということなの? そして本名はパンペルデュだったのね。
オレはフレンチトーストに肩透かしを食らったように気になった。と、同時に賢くなった気がした。気がしただけかもしれないが、少なくとも友人に披露するネタができたぞ。

さて、そろそろ仕事に戻って「ほぼラン」の原稿を書くとするか。

カウンターには、当日焼き上げたパンが並んでいる。どれもこれも美しくキラキラして見える。パン好きの女性は目を輝かせて、それらのパンを食べるのだろう。

多くの女性がいま、パンランチに魅了されている理由が少しだけわかった。おいしいパンを求めて各地のパンの名店をめぐる「パン旅」が静かなブームになっている理由も、ほんの少しだけわかったような気がした。

小さな発見に気持ちが弾む、2022年4月の春うらら。気分がいいので、circle coffeeの庭で開脚逆立ちをしてから事務所に帰るとするか。

カウンターに当日焼き上げたパンが並ぶ。
この日のパンは、ピザフィカッチャ、たらもフィカッチャ、ソーセージフィカッチャ。
オレンジのタルト(1個330円)
りんごのタルト(1個330円)
クロックムッシュ(1個280円)
食後、庭で開脚逆立ちをする倉田楽。決まった!
店名circle coffee
住所福知山市岩井51
営業時間10:30〜17:00
定休日水・木曜日
circle coffee
Instagram
https://www.instagram.com/circlecoffee_morii06/
インテルナモリイ
Instagram
https://www.instagram.com/morii_style/

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