文・撮影 ちょい旅ライター 水田ウタコ
1日8,000歩以上歩こうと決めている水田ウタコが、北近畿周辺の施設や飲食店に出向いて、見たこと、感じたことを自由につづる「ちょい旅」紀行。第6回は日本三景のひとつ天橋立へ。今回は旅の同伴者に愉快なアラフォー・Aちゃんが加わり、口もペダルも動き続ける。にぎやかで彩り鮮やかな秋を味わってきた。(ちなみにこの日の歩数は13,517歩)
そうだ、サイクリングしよう
さわやかな秋晴れとなった11月のある日。友人Aちゃん(筋トレマニア・3児の母)に声をかけてみた。
「ねぇ、天橋立をチャリで走ったことある?」
「ない」 「ほな行こ」
子どもたちを学校に送りだし、やれ洗濯だの、晩御飯の支度だの、スーパーマツモトの特売だの、いそいそと用事を済ませて車に乗り込み、京都縦貫道で向かうは宮津天橋立IC。ああ、おかんたちの朝は忙しい。 到着したのは天橋立の南側に位置する文殊エリア。
このあたりは京都丹後鉄道の天橋立駅もあることから、観光の要所にもなっている。平日にも関わらずさすが日本三景、行き交う観光客でにぎわう。 車を停めるべくきょろきょろと駐車場を探す。駐車料金に幅があるな~、どこに入ろうかな~と探していたそのとき、ぱっと視界に入った「終日500円」の看板。こういうお得情報に対しては、サバンナのライオンより動体視力が優れているわたし。
一台分だけ空いていた駐車スペースにするっと滑り込み、料金を払う。店主さんの姿は見えず、そこにはただ料金箱があるのみ。
こういう野菜の無人販売所的な、人の良心に裁量がゆだねられているシステムが観光地でまかり通るとは、駐車料金くすねてやろうみたいな薄汚れた考えの人は来ないってことなのですね。
本日の目的である「自転車で天橋立縦走」を果たすべく、まずは自転車を借りることに。 この界隈にはレンタサイクルをしている店舗はいくつかある。事前に調べてきたところ、おおよそ2時間400~500円というところが多い。なかには、終日レンタルや、乗り捨てOKといった店舗もある。
今回は2時間くらいの予定なので、橋立大丸で借りることにする。
私が受付を済ませている間もひっきりなしにレンタサイクルを借りる人が来る。みなさん、こんな晴れた日には思わずチャリに乗りたくなるものなのかしら。 ちなみに、同行のAちゃんは「長男(小4)のチャリを借りてきた」とのことでレンタサイクルは借りず。車に積んで来られる人は愛車でサイクリングしてももちろんよいのです。
いざ、天橋立へ出発
勢いよくペダルをこぐおかん二人組。まだ天橋立に入ってないのに「風が気持ちええわ」「ああ最高」と楽しさフルスロットル。久々の自転車に、もうモト取ったわってくらい満足感を覚える。
普段の生活ではめったにお目にかかれない、さわやかな光景が視界いっぱいに広がる。 「この海と空! ハネムーンで行ったモルディブ思い出すわー」とAちゃんも興奮冷めやらぬ様子。モルティブと宮津は通じるところがあるのですね。
天橋立は全長約3.6km。
形状は地球儀でいうところのチリのように細長く、幅は狭いところでは20mほどしかないのだそう。
東は日本海、西は阿蘇海に挟まれ、常に潮風が強く吹きすさぶ。
砂地に無数の松が育っていて、その形状もひとつひとつ異なり、ダイナミック。時間の経過によるものか風によるものなのかわからないけど、一本一本が作品のよう。 倒れ掛かりつつもしっかりと大地を踏みしめる松の木の下をくぐるのも、遊園地のアトラクションのようでわくわくしちゃう。
ペダルをこぐ足も止まらないうえに、喋り続ける口も止まらない。 子どものこと、お金のこと、仕事に趣味にシェイプアップにご近所のことなどなど。
思う存分おしゃべりをしたいけれど、「密室」で喋るのはちょっと気が引けるこのご時世。そんな中、さわやかな潮風を浴びながら、日本海を眺め、サイクリングでカロリー消費しながらのおしゃべりっていうのはとても良いもの。密を回避、そしてトレーニングにもなる。
松の木立をくぐりぬけ、次から次へと話題の変わる会話のキャッチボールを続けながら北へ進むこと15分。気がつけば松並木の北側・府中エリアへ到着。
自転車を道端に停めてしばしの休息。この辺りは人影もなく、静寂が広がるなか、それでもまだまだ止まらないおかんのおしゃべり。
話の最中にちょいちょい「ああ虫や」「また虫がきた」と振り払うAちゃん。
「虫なんかおる?」と覗きこんで数秒後に虫に気づくわたし。Aちゃんの「虫を察知に判断する能力が人より長けている」ことが判明するのも、外で過ごしているがゆえ。
また視界になにか動くものが飛び込んでくる。
「あれなんや」
「また虫?」
「え、人?」 んなわけはない。一匹の鳥が静かに羽を休めていました。ああ優雅。
海岸を歩くとたくさんの貝が落ちている。我々おかんは、子どもを遊ばせるためにこういうところに来ることは多々あるけれど、子どもが不在であっても、海は楽しく遊べる美しい場所なんだってことを久々に思い出せた気がする。
「ウニの殻も落ちてるのねー」なんて話してて、ぱっと海の中を見てみると一面のウニ! ウニ! ウニ! こんなにウニを見たのは初めてかも、と興奮する我々。 もちろん捕って食ったりはしないけど、こんな大量のウニを食べちゃえたらなぁ……と夢想していたらおなかがすいてきた。なんと単純で正直な体よ。
Aちゃんとて同じようで「おなかすきましたね」とのことで、府中エリアをあとにする。
我々は来た道をそのまま戻ったけど、時間と体力に余裕があれば、ケーブルカーで笠松公園に上って股のぞきをしたり、ぐるっと宮津の街をサイクリングしながらいろんなお店を覗いてみたり、とまだまだ天橋立エリアを楽しむ方法はいろいろある。
童話の世界に入ったような小さなカフェでお昼ごはん
松並木を南下し、再び文殊エリアへ。 レンタサイクルを返却せず、そのまま自転車で府道2号線を南下すること5分ほど。
今まで砂地を走っていたので一転、アスファルトの道はスピードがのってすいすい進む。
本日のランチに伺ったのはtricot(トリコ)。
まるで童話に出てきそうなかわいらしい一軒家。このこぢんまりとした感じがとてもかわいらしい。ぺこぺこの胃袋を満たすより先に、アラフォーのメルヘン心が満たされる。
店に入り、窓側の席に座る。 「目の前に広がる中州との間の水路がまるでベネチアの運河のようや」
「いやいや、ここはオランダやで」 と行ったことないけど、そんなことを口にしてしまうような光景。
時折、波しぶきをあげてプレジャーボートが通り過ぎ、歩道を老夫婦が歩いていく。こんなに間近に海や水を感じられるなんて、盆地の民からするととても新鮮。
Aちゃんはベリーベリーベーグル、私はキーマカレーを注文。
まだまだ飽きずにおしゃべりしていたらあっという間にごはんが到着。
まずはキーマカレー。こだわりが感じられるお皿も美しい。
がっつりスパイスが効いているわけではないけれど、たっぷりの野菜が入っているので、手間ひまがかかっているんだろうなと思える滋味深い味わい。
サフランライスの優しい香りがふんわりと漂う。カレーをかきこむ手が止まらず、サイクリングで疲れた体にぐいぐいとしみこんでいく。
Aちゃんが頼んだベーグルセットも到着。
こんがりとトーストされており、「外はカリっと中はモチっの食感が素晴らしい」と悶絶するAちゃん。はじめ、「1個で足りるかな?……」と心配だったそうだけど、ぎっしりとボリュームのあるベーグルが1個でも十分胃袋を満たしてくれたそう。サラダのドレッシングも美味しい。陰の主役なんじゃないかというくらいクオリティが高い。
こぢんまりとした店内だけど、ナチュラルな石鹸やマスクなど、生活を彩ってくれる雑貨も販売している。一角には焼き菓子も。 レンガくらいの重厚感のある、アーモンドショートブレッドというちょっとしたお菓子を子どもたちのお土産に買って帰る。1枚を4人で分けてもおなかいっぱいになるくらい、食べても食べても減らない不思議なビスケットのよう。
美味しいランチやスイーツで気持ちが満たされるのはもちろんですが、なんといってもここの一番のご馳走は窓からの眺め。 静かに流れる水路を眺めていると、小舟に乗ってふわふわとたゆたっている気分になる。日頃の生活で凝り固まった脳みそが、ときほぐされるよう。なんとも贅沢なセラピー。
戻りは、来た道を戻るのではなく、さっき眺めていた店の目の前の水路の横を通っていこうと決め、自転車を反対側に回す。
道幅1m程の狭い道。柵もないので快適さと同時にスリルも味わえる。 「こんなとこ、子ども連れてきたら、一瞬でどぼんやで」と口々に語る我々。風光明媚な場所でびしょ濡れの我が子をひっぱりあげることになるところでした。
天橋立を往復して、ランチを食べて返却してちょうど2時間。ちょっとハイスピードぎみにではありましたが、天橋立サイクリング満喫。
そういえば数年前に、自転車に乗れるようになったばかりの長男と来た時は、往復だけでたっぷり2時間はかかった気がする。ここ天橋立は、自転車と原付しか通れないので、自転車の練習にもうってつけ! 今度は自転車に乗れたてほやほやの娘と来ようかしら。
お土産と今日の晩御飯を買う物産館
自転車を返却し、宮津市街地へ戻る。 ミップルの前にあるピンク色の特徴的な建物。「sandwich 2 go!(サンドイッチ・トゥ・ゴー)」という天然酵母パンとベーグルのお店が前々から気になっていたので行っちゃおう!と向かうもの、この日はおやすみ。
気を切り替えて、こちらもミップルのすぐそばにある「道の駅海の京都宮津」の一角にある宮津まごころ市でお買い物。
宮津の野菜、魚はもちろん加工品の種類が多くて目移りしちゃう。 宮津といえば、有名な富士酢でおなじみの 飯尾醸造の商品も販売している。シンプルなお酢だけにとどまらない、バラエティ豊かな商品が魅力的でいろいろと愛用していますが、ここで初めてお目にかかる商品と出合ってしまった。
その名も「しゃぶしゃぶに夢中」。
出汁と合わせたこのお酢に粉山椒をたっぶりかけてしゃぶしゃぶを食べるんですって……こんなん絶対美味しいやんと思わず購入。 山椒が苦手な子どもたちにはこちらも宮津名物・カレー焼きそばのインスタントを購入。本家の宮津カレー焼きそばをまだ食べたことがないので、まずおうちで予習しておきます。
疲れた体を癒すべく、日帰り温泉でも入っていきたいなーなんて話しながらも、我々はいそいそとホームタウンに戻る。そしてこれから、せわしない夕方からの家事育児に向かっていくのです、久々のサイクリングで痛くなったお尻をいたわりながら……。
車に自転車を積んでいろんな街をふらふらとサイクリングするのも、新しい発見がありそうで楽しいのかもなと夢は広がる。まずは家の近くから、自転車での移動をはじめようかな。
【施設データ】
店名 | 橋立大丸(レンタサイクル) |
住所 | 京都府宮津市文珠475 |
TEL | 0772-22-4151 |
営業時間 | 8:30~17:30 |
HP | http://www.hashidate-daimaru.co.jp/ |
店名 | tricot |
住所 | 京都府宮津市文珠541-12 |
TEL | 0772-22-5188 |
営業時間 | 10:00〜18:00 |
定休日 | 木曜日 |
インスタグラム | https://www.instagram.com/tricot_casualcafe/ |
店名 | 道の駅海の京都宮津(宮津まごころ市・農産物等直売所) |
住所 | 京都府宮津市浜町3008 |
TEL | 0772-22-6123 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
休業日 | 1月1日、2日 |
HP | http://michinoeki-miyazu.jp/magokoro/magokoro.php |
【行きたかったけどお休みだったお店】
店名 | sandwich 2 go! (サンドイッチ・トゥ・ゴー) |
住所 | 京都府宮津市新浜1987 |
TEL | 0772-21-1066 |
定休日 | 水・木曜 |
【今回のお小遣い】
<駐車場>
終日 500円
<レンタサイクル>
一台2時間 400円
<tricot>
カレーセット 1,450円
ベリーベリーべーグルセット 1,100円
アーモンドショートブレッド 490円
<宮津まごころ市>
しゃぶしゃぶに夢中・ベーグル・カレーやきそばなど 合計3,019円
生きることは旅すること。ハイボール片手に、「通い猫」と「3人組」を愛でながら生きる会社員兼おかん。京都府綾部市在住。
https://www.instagram.com/utaco_1211