文・撮影 ちょい旅ライター 水田ウタコ
1日8,000歩以上歩こうと決めている水田ウタコが、北近畿周辺の施設や飲食店に出向いて、見たこと、感じたことを自由につづる「ちょい旅」紀行。第7回の舞台は京都府京丹波町。山に囲まれた古民家の絶品スパイスカレーに気持ちをわしづかみにされた。このとき、はじめて同町に「4つの道の駅」があることを知り、全部をめぐってみようと思い立って後日再訪した。(ちなみにこの日は9,342歩)。
絶景もカレーにとっては一種のスパイス
スパイスカレーというものは、数年前までは、わざわざ都会に出ないと食べられないレアな食事やった。また、スパイスという文字と響きから「モーレツに辛いカレー」「ただただ辛いだけで味に広がりのないカレー」を想像する人が多くいたように思う。つまり、多くの人が”様子見”していたんやね。 ところが北近畿にもスパイスカレーを提供する店が増えたことで、状況は一転。スパイスカレーを食べた多くの人が「辛いだけやない」「スパイスの調理次第で無限に味わいが広がるやん」と納得。その結果、スパイスカレーは以前と比べて市民権を得たように思う。知らんけど。
そんななか、「2021年春に、京丹波町に古民家スパイスカレー屋さんができたってよ!」と京丹波町在住の友人に教えてもらって気になっていたCafé Eden(カフェエデン)。やっと行けました。
27号線から「市場」の交差点を北に入り、旧和知町内を走ると5分ほどでナビは案内終了。見渡す限り住宅が建ち並び、遠くには山が悠々と続く。こんなところに本当にカレー屋さんがあるの?……と不安になりつつ、きょろきょろしていたらノボリを発見。
車を停めてノボリの方に進み、坂を上ると大きな古民家があらわれる。
一見して普通の民家。玄関へ向かうと左手から気配を感じる。んんつ、誰かに見られてる……?
じっと来客の姿を見つめる一匹のあひるちゃん。私が近づくとひょこひょこと人懐っこく近寄ってきてくれる。ああ、あひるってこんなにかわいいだなんて知らなかった。このままじっとりねっとり愛で続けて一日が終わってしまいそうなこの魅力、引力、恐るべし。
この日のカレーは「山椒とすだちのキーマカレー」。なんだ、この未知の組み合わせは! 山椒×すだち×スパイスカレー?? そんな刺激が強い三つ巴の戦いで壮絶な打撃戦になりませんか??
他のメニューはというと、エビフライカレーやバターチキンカレー、おこさまカレーなどがあり、辛さが苦手な人も楽しめそうなラインナップ。
がらがらと戸を開けると店中からカレーの香りがふわんと漂う。否が応でも期待は大きく膨らんじゃう。 靴を脱ぎ店内に入ると、古民家らしく田の字型にしつらえた4つの和室がある。
部屋の仕切りが取り払われてるので開放感のある広々とした店内。窓からは京丹波の景色がばーんと飛び込んでくる。
部屋のいたるところになぜかオオサンショウウオのぬいぐるみが散在している。なんでオオサンショウウオなんだろう。今度伺ったときに聞いてみよう。
さぶとんに座ってぼーーっと窓の外を眺めるだけで、贅沢な気持ちが心いっぱいに広がっていく。疲れた心にエネルギーが充填していくのを感じる至福の時。 ほうけているとカレーが到着。
うわ、パパド(ぱりぱり薄焼きせんべいみたいなやつ)が付いてる! これを崩してぱりぱりを感じながら食べるもよし、カレーに浸してしなしなにするもよし。食感のアクセントに深みが出るので大好きなのです。
危惧していた三つ巴の合戦は、山椒、すだちそれぞれの酸味やクセを、アチャール(カレーのまわりに添えられているお漬物のようなもの)がやさしく包み込んでくれて、最後に大いなるスパイスの力で抱擁される平和的解決。いやあ美味しい。こんな独創的なスパイスカレーが食べられるお店があるだけで、疲れた時の心の拠り所になりそうです。
他のカレーも食べてみたいな、暖かくなったらジェラートも食べてみたいなと再訪を誓い、あひるちゃんのラブリーさに後ろ髪ひかれつつお店を後に。
「道の駅」ファン、一人勝手に京丹波4箇所制覇
帰り道、買い物をしようと「道の駅 京丹波 味夢の里」に寄ったところ駐車場にこんな看板が。
「4つの道の駅」。人口13,000人ほどの小さい町に、道の駅が4つもあるとは……。そう言われてみれば、なかなかレアなのかも。 ほな回ってみよ、と後日、京丹波町を再訪。レッツ道の駅巡り!
まず1軒目。 国道27号線沿い、旧和知町にある「道の駅 和(なごみ)」
案内所がある建物は、近隣のイベントのチラシがたくさん置いてあったり、奥の展示スペースは町内の人たちの作品が展示してあったりと、さまざまな発見に出合える。
建物のすぐ目の前には由良川が流れる。暖かくなったらここで昼ごはんやおやつを楽しむのも気持ちよさそう。川遊びもできるのかな。
店内には広々としたフードコートがあり、昼食時だったのでえらい賑わい。地元の人が多そうな印象。 お弁当を買って食べている人も多い。お寿司や天ぷらに鯖のなれずし! 種類が豊富で目移りしちゃいそう。
販売コーナーを見るとまず目に飛び込んできたのが笠。笠が買える道の駅ってなかなかない気がする。
京丹波町内に工場がある(♪イシイのおべんとくんミートボールっでおなじみの)石 井食品の商品も販売。スーパーでお目にかかれないレアな商品も多くて興奮。
この道の駅のすぐそばにある菓歩菓歩の酒粕チーズチーズケーキの姿も。この日は定休日で菓歩菓歩に行けないなとしょんぼりしていたので、ここで買えるのは嬉しい。こういうのが道の駅の醍醐味。
ここで楽しみにしていたのはCafé Edenのカレーパン「京丹波のめぐみカレーパン」。インスタで「和で買えます」との投稿を見て、狙いを定めて意気揚々と向かったのです。
さて、冬野菜を買おうと野菜コーナーに。この時期はたくさん野菜が収穫できる時期なんだけど今年は少ない。雪が多くて野菜を畑から掘り出しに行けないのかしら。
白菜、芽キャベツ、青ネギ、サラダ用菜っぱつめあわせ、トレイからはみ出さんばかりに入った天ぷら(300円!)、Café Edenのカレーパンなどなどを購入。 京丹波(和知)のものをたくさん買える幸せ。
帰宅後、持ち帰ったカレーパンをオーブンであたためて子どもたちとおやつに頂いた。辛みは強くなく、スパイスの風味がぷうんと香って、匂いからもう美味しい。娘も「中身を追加して食べたい」と言ってたので、今度は娘も一緒にお店に行かねば。
スーパーと道の駅のハイブリッド
2軒目。
続いては「道の駅丹波マーケス」
縦貫自動車道の丹波ICの近くにあるので、よく買い物に立ち寄っていたけど、そうかここも道の駅なのね……。
「サンダイコー」というスーパーがフロアの大部分を占め、その周りに専門店が軒を連ねる、こぢんまりとしたショッピングモール。 京丹波町民と話してると「マクドがあるからマーケスへよく行く」という話をよく聞く。マクドの威力強いな。
訪ねた日は水曜日。 なんと専門店は軒並み定休日。お肉屋さんとFUJIYAくらいしか開いておりませんでした。
ここではあまり京丹波ならではのモノに出合えず。マーケスの入口にあるレトロなおもちゃ屋さん竹内玩具店も定休でした。残念。これから水曜日には気をつけます。
そして3軒目。 お次は「京丹波味夢(あじむ)の里」
4か所の中で一番新しい道の駅。 高速(京都縦貫道)からも一般道からもアクセスできる好立地で、人の数が最も多かった。
SA(サービスエリア)として遠方からの訪問客にも利用されるので、丹波に限らず八つ橋、ぶぶ漬けなどの京都土産もたくさん売ってあったのが印象的。
この味夢の里の推しポイントは、塩谷古墳公園が隣接していること。なんと道の駅から徒歩5分。塩谷古墳群は5世紀くらいにできたそうです。道の駅から歩いて行けて、しばし古代ロマンに酔いしれます。
道の駅内の「京丹波ステーション」(この界隈のチラシが大量に配架してあり、コンシェルジュさんが対応してくれるコーナー)には、この古墳で出土した埴輪のレプリカが展示してあります。かわいい……。京丹波町へ行けば毎回立ち寄り、毎回撮影してしまうかわいらしさよ。
前述のようにお土産コーナーも充実しているけど、ここは「和」と同じく、京丹波の農家さんや生産者さんのものがとても多いのも特徴。
食工房kainokiさんの「九条ネギのベルデソース」や「パンのお供クリームシリーズ」など独創的なプロダクトを気にしつつ、今回はグラノーラを購入。和知の豆腐屋さんのおからを使ってるのだそう。ステキな地産地消! 京都府立須知高等学校 食品科学科が作ったビスコッティも黒豆の風味がほのかに香ってとても美味しい。
ホッケーもできちゃう道の駅
最後4軒目。
「道の駅 瑞穂の里・さらびき」
「さらびき」ってなんやと思ってみたら、ここの住所が「京丹波町大朴皿引(おぼそさらびき)」ですって。なるほど。
173号線に面した道の駅。 よくこの道を通るけど、道の駅に入るのはなんと初めて。どきどき。
駐車場を見ると、車の数よりバイクの数のほうが多い。ツーリング途中の人がよく立ち寄ってるのかな。 ふらふらとエントランスの周りを歩いていたら、小さなコートを発見。
なぜホッケー……?と思いきや、ここ旧瑞穂町は「ホッケーの街」として有名なのだそう。敷地内にあるグリーンランドみずほには人工芝のホッケー場があり、地元の府立須知高校はホッケー強豪校なのだそう。近くの町でも知らないことはまだまだたくさんある。
13分の1のミニサイズのホッケー体験フィールド。
道の駅の人に「やりたいです」と声を掛けたらスティックとボールを貸し出してくれるそう。うわああああ、やりたい! やってみたい! なのに今日の私はおひとりさま……。 今度また家族か友達と繰り出そうと心に決めて、店内へ。
ここが一番ローカル感強め。なんたって入店して、最初に売られていたのがカマですもの。
お野菜も豊富、そしてお土産も豊富。 篠山に近いこともあり、篠山のお菓子や加工品も多かった。ジビエも種類豊富で嬉しいものです。
「和」「マーケス」「味夢の里」「さらびき」。
4箇所それぞれカラーが異なっているので、道の駅としてひとくくりにはできません。京都の真ん中・京丹波町にこんな4つの顔があるとは、我が町に道の駅のない民は少々羨ましく思いながらも、また今度それぞれ行けることを楽しみにしております。
【施設データ】
店名 | Café Eden |
住所 | 京都府船井郡京丹波町大迫山根5 |
TEL | 0771-84-0123 |
URL | https://www.instagram.com/eden2020621/ |
営業日 | 月・金11:30〜14:00 土・日11:00〜15:00 |
施設名 | 京丹波道の駅和(なごみ) |
URL | https://wachi-nagomi.com/ |
住所 | 京都府船井郡京丹波町坂原上モジリ11 |
営業時間 | 売店(特産品販売所)8:30~18:00(夏期は〜18:30) フードコート 11:00~17:00(ラストオーダー15:30) |
定休日 | 火曜(祝日の場合は営業)※臨時休館日あり |
施設名 | 道の駅 丹波マーケス |
URL | https://markeds-tamba.com/ |
住所 | 京都府船井郡京丹波町須知色紙田3番地5 |
TEL | 0771-82-3180 |
営業時間 | 9:00~20:00 |
定休日 | 年中無休(店舗により異なります) |
施設名 | 味夢の里 |
URL | http://ajim.info/ |
住所 | 京都府船井郡京丹波町曽根深シノ65番地1 |
TEL | 0771-89-2310 |
営業時間 | 6:00~21:00 |
定休日 | 年中無休 |
施設名 | 道の駅 瑞穂の里・さらびき |
URL | https://www.greenlandmizuho.co.jp/ |
住所 | 京都府船井郡京丹波町大朴休石10-1 |
TEL | 0771-88-9350 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 年末年始、第2第4木曜日 |
【今回のお小遣い】
CafeEden
山椒とゆずのキーマカレー 1,100円
道の駅和 野菜
カレーパンなど 1,660円
道の駅 味夢の里
パン、野菜など 1,080円
道の駅 瑞穂の里さらびき
いなりあげ、丹波しめじ 560円
生きることは旅すること。ハイボール片手に、「通い猫」と「3人組」を愛でながら生きる会社員兼おかん。京都府綾部市在住。
https://www.instagram.com/utaco_1211