イラスト:あだす
ようこそ、北近畿チンミ共和国へ! 海の幸・山の幸に恵まれ、珍味が豊富な丹波・丹後・若狭・但馬地方をひとつの国とみなし、「北近畿チンミ共和国」と名づけました。これは福知山のみならず世界各国・全国各地の「ふくたん」読者に向けて、北近畿の珍味の魅力を紹介する不定期連載記事です。
第1回目に取り上げる珍味は「へしこ」。ん、そもそもへしこって何? どんな食べ物なの? 調理法は? はい、ご心配なく。へしこ未体験の他府県の読者にもわかる記事になっています。
さあ、珍味案内人のウタコ&カヨよ、取り寄せたへしこ商品を調理して存分に味わい、その奥深さを全国の珍味ファンに届けてくれ!
※今回はACT1(へしこ劇場 第1幕 UTACO)をお届けします。
珍味案内人プロフィール
珍味を探し続けて三千里。珍味を求め、珍味を愛するアラフォー。旅先のスーパーで変わった食材を見ると小躍りする癖がある。気になるものは、とりあえず食べてみるが信条。苦手な食材はきゅうり。
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<facebook>
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丹波地域の気になるモノやコトを女性ならではのゆるやかな視点で紹介する情報発信クリエイター。文章を通じて人生にキラリ灯がともるようなモノ・コトを伝えることが目標。渋い定食屋さんや、外観とメニューのギャップのあるお店をときめきレーダーで発見するのが楽しくなってきた今日この頃。
<Instagram>丹波しるみる
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しょっぱいへしこ初体験も今は昔
始まりました。「北近畿チンミ共和国」記念すべき第1回目! 今回のテーマは「へしこ」。
北近畿に住むまで、私にとってへしこは珍味中の珍味でした。見たことも食べたこともない。内臓を取り出した魚を塩漬けしたのち、糠に漬け込む? まったく想像つかないお味。
へしことのはじめて出合いは、ある冬の日の越前への旅行でのこと。
夕食に出されたお膳の上の小皿に乗る、茶色い薄切りのウッドチップのようなもの。「これがへしこか」と意を決して一欠片を口にほうりこんだ。とたんにぎゅっと顔をしかめてしまうほどのしょっぱさ。
日本海のすべての水を凝縮したんかと思うほど塩っ辛く、数年干した木のかけらのように硬く、口の中のすべてのしょっぱさを洗うように日本酒を流し込んだ私。
ああ、これは日本酒のアテとして存在するものなんやな、と無理やり己を納得させたあの日から数年が経ち、今なら大声で言える、「ほんまのへしこは旨い!」。
私が今回取り寄せた珍味は、次の2品。
へしこ工房HISAMI(京都府京丹後市)
◆旨米鯖のピクルス 918円(税込)
◆お試しセット 1,620円 (税込)
珍味オブ北近畿といえばこれ!
ある日、私のもとに、スタイリッシュなロゴの入った箱が届いた。 その中に鎮座していたのは、私が注文した「お試しセット」と「旨米鯖のピクルス」。
HISAMIの包装紙をほどくと、中からひと口サイズのへしこが4種類じゃじゃーんと登場。お試しセットだ。
【至福】、【究極】、【カレー】、【黒胡椒】の4種類。
へしこなんてどれも同じ味でしょ……と思っていたけど、このあとで私は食べ比べをすることで「こうも違うのか!」とへしこの奥深さに驚愕することになります。
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とある日のランチ。
【黒胡椒】を使ってペペロンチーノを作ってみることに。 レシピはHPに載っている「へしこのオイルパスタ」を参考に作ってみました。
家の裏で収穫した採れたてのタケノコと、畑で青々と育った青ネギがあるのでこれも一緒に使うことに。
にんにくを細かく刻み、唐辛子をなるべく薄く輪切りにする。この時点で台所に漂う香りがもうすでにご馳走。ここでもう一段、ご馳走ランクをあげるべく【黒胡椒】へしこを仰々しく取り出したところで、横でパスタを茹でている長男が渋い顔。
「それ何なん?」
「へしこやで。苦手やっけ?」
「うーーん、たぶんそんな好きちゃうから入れんといてほしい」
うら若きキッズに無理強いはしますまい。じゃあ、へしこを一緒に混ぜ込んで作るのはやめて、私だけへしこあと乗せ・別添えでいただくとするか。
へしこをまな板の上に置き、スーーっと包丁を入れる。現れたのは淡い桃色をした瑞々しい鯖の身。へしこ=乾燥してかっぴかぴで茶色いものだと思い込んでいたので、良い意味で裏切られる。へしこってこんなにジューシーなの?
驚いていたら長男も「あら、美味しそうやん」と覗き込んできたので、まぁひと口食べてみないな、と薄切りのへしこを口の中へ。すると彼も鳩が豆鉄砲を食ったような顔で驚く。
「え、ぜんっぜんくさくない!」
私もひと口つまんでみる。 「ほんまやね。柔らかいええ香りやわ」
ということでめでたく、へしこをパスタに混ぜ込んでもええよと長男からのゴーサインも出た。
熱したオリーブオイルに刻んだにんにくを入れ、香りが立ってきたところにタケノコを投入。オイルを絡ませるように炒め、薄く切ったへしこと唐辛子、そして斜め切りした青ネギも入れ、ささっと茹でたパスタと混ぜ合わせて完成。
仕上げに数切れ、へしこをトッピング。断面のフレッシュさにくらくらしちゃう。
口に運ぶとこれまたびっくり。へしことは塩っ辛いものだというのが世の常だと思っていたけど、あっさりと覆される。塩辛さゼロ。まさにほどよい塩梅の塩加減がふんわりとパスタ全体を包み込んでくれている。【黒胡椒】と銘打たれているものの、胡椒の加減もほどよく、口当たりのきつさは感じられない。
へしこのパスタと聞くとパンチの効いた濃厚な味わいかと思いきや、ふわりと優しく、ふふふふと笑みがほころんでしまいそうな柔らかさ。
長男も美味しい美味しいとかきこんでいたところ、ちょっと塩気が足りないなと塩を軽くふる始末。まさかへしこに塩を振るなんてことがあるとは。
二人してきれいさっぱり、ぺろりとたいらげました。へしこパスタ、週に2回は食べたい。
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お次は【至福】と【究極】。
HPによると【至福】は「塩分控えめで食べやすい。へしこ初心者向け」、【究極】は「塩分控えめかつ、鯖に脂がのっているため食べやすく、旨みもある」とのこと。
まず薄くスライスした両者を食べ比べ。
両方とも一般的なへしこより塩分量が少ないので、塩辛さは感じられないけど、食べ比べてみると塩加減が違うため、口の中に広がる風味の違いが味わえる。
【至福】はよりまろやかでフルーティー。【究極】はジューシーな脂の甘さがとても芳醇。思わずにんまりしちゃう。
【至福】は旨米鯖とニラのオイスター炒め、【究極】はへしことマカロニサラダのレシピを参考にいただいてみることに。
両方のレシピにも「へしこをグリルまたはフライパンでしっかり焼く」とあるので、油を引かずに焼いていると、鯖の脂がじゅわわわとひろがり、糠の香りが一段と香ばしくなる。 嗅覚センサーがびんびんに反応しちゃう。焼いてるだけで「もう美味しいわ」と呟いてしまった魅惑の香りよ。
作ってる最中にオイスターソースが切れていることに気付いたので、急遽、醤油とみりんで和風の味付けに変更したニラの炒め物。そして、マカロニサラダをある日の晩餐の食卓に出した。
「もっとクセがあると思ったけどうまいやん」
「なにこれ! 味が濃い~」
「へしこってむちゃくちゃ美味しいやん」とへしこ御前を前に食卓はやんややんやと盛り上がる。子どももこんなにぐいぐい食べてくれるなんて嬉しいもんです。これぞ、珍味オブ北近畿だわ!
へしこは醤油にはもちろん合うし、マヨネーズにも難なく馴染む。こんな汎用性の高い食材だなんて知りませんでした。
そして残るは、【カレー】のへしこ。
こちらはシンプルに炙っただけのへしこをごはんとともに。
ふんわり漂うスパイスとへしこのジューシーさがこんなにマッチするとは。そういや鯖カレーって美味しいもんね、そら合うわな、と思いながら止まらない白米。これはおそろしい食べ物です。
ひと口サイズなので、使い切りできるのがとてもありがたい。美味しいへしこを美味しいだけ、しかも4種類もの変化を楽しめるなんて、とても魅力的。
未知との遭遇、へしこのピクルス
HISAMIのオンラインショップを見ていると、聞き慣れぬある商品に目が留まる。 旨米鯖のピクルスだ。
へしこのピクルスとは初耳だし、想像もつかなかった組み合わせ。
塩漬けしたあとに糠漬けした発酵食品を、さらにお酢にも漬けてしまうだなんて。
どんなエキセントリックな一品になっているのか、興味津々!
このピクルスの主役は「旨米鯖」というHISAMIイチオシのへしこ。
HISAMIオリジナル糠床、米ぬかに麹、白ワイン、ヨーグルトなど4種類の発酵食品をブレンドした「旨米床」で漬け込んだ旨米鯖は、これまでの糠漬けにはないフルーティーな香りと麹の甘さが際立った糠漬け。(HPより)
とのこと。
確かに、糠と塩だけ、という伝統的なへしことは一線を画した新しいへしこというか、もはや別物のへしこ。
その旨米鯖を炙り、〆鯖風にピクルスにしたんだとか。ふむふむ。
瓶のふたを開けるとき、お酢特有の「ツン」とした香りがくるかなと身構えたものの、なんと漂ってきたのはフルーティーなさわやかな香り。
ラベルに明記されている原材料を見ると、ディルやコリアンダーシードといったスパイスが入っている。このおかげで魚臭さは感じないのね。
いざ、実食。
口に入れて最初に感じるのは甘さ! もちろん、砂糖の甘味ではなく、鯖本来の甘味がこんなに広がるとは。
へしこになったことで凝縮された鯖の甘さが、もう一段階、上質でこだわりの酢に漬けられることで、甘味がぐぐっとまとまってふんわりと口の中でほどける。すぐ後から、さわやかさが追いかけてくるので、口の中は大草原を駆け抜ける春の風のように爽快。
ひと口食べるだけでこんなに幸せ感じちゃっていいの……とそわそわしちゃう魅惑の味わい。
ただでさえビンビンの多幸感をよりいっそう増すためには、いい相方が必要かと思いまして、抜け目なく用意しておりました。
今回のお供は綾部の酒蔵・若宮酒造と高校・大学の学生たちがタッグを組んで作った「CHILLな夜に癒しを得る」というなんともナウでヤングな日本酒。
くーーーーーーーっっ。ふんわりとした甘さと、その裏にフルーティーなさわやかさが広がる旨米鯖のピクルスと、さらりと飲みやすいながらも米の風味をしっかりと感じるこのチルい日本酒。相性がばっちりすぎる。これぞ令和の酒と肴。新世紀を内臓全部で感じております
HPには「チーズに合う」との一言が。うわわ、クセ強めのゴーダチーズの薄切りに、これを乗っけて食べたら、新しい味の世界がパッカーンと開いちゃいそうだわ。買ってこなければ……。
ウタコの推しコメント
旨米鯖のピクルスとお試しセット、どちらも大チンミ!
へしこが苦手という人にこそ食べてほしい、新時代のへしこよ!
⇒次号予告 「北近畿チンミ共和国」第1回へしこ ACT2 KAYO
へしこ初体験のカヨさんが”未知の珍味”へしこの魅力をレポートします。お楽しみに。
お取り寄せ先データ
店名 | 味工房ひさみHISAMI (株式会社SEA CRAFT) |
店舗住所 | 地産食堂HISAMI 京都府京丹後市丹後町間人1830 |
TEL | へしこに関するお問い合わせ先 0772-75-8080 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 水曜・木曜不定休(月2回) |
★お取り寄せ オンラインストア | HISAMI ONLINE STORE https://www.store.hisami-kyoto.jp/ ※送料はオンラインストア内の全国発送早見表をご覧ください。 |
HISAMI HP | http://www.sea-craft.jp/ |
へしこ工房HISAMI | https://www.instagram.com/heshikokobo_hisami/ |
へしこ工房HISAMI Facebook | https://www.facebook.com/heshiko.hisami/ |
★北近畿地方の珍味メーカーのみなさまへ★
ふくたんは「北近畿チンミ共和国」で取り寄せる珍味を調査しています。「うちの珍味も記事で紹介してよ」「ウタコさん、カヨさん、うちの珍味を一度食べてみて」という連絡をお待ちしております。
ふくたんのメール
fukutan.net@gmail.com
もしくはInstagramのDMで倉田楽までご連絡ください。
https://www.instagram.com/fukutan_net/
ふくたんチンミニ知識
へしこってどんな食べ物?
へしこは、鯖や鰯などの魚を塩漬けしたあと、糠に長期間漬け込み、熟成させた保存食で、福井県若狭地方と京都府丹後半島の郷土料理です。これらの地方は、冬は積雪が多く、時化で漁ができない日が少なくありません。そこで厳しい冬を乗り越えるための保存食としてへしこが生まれました。現在はおもに石川県から鳥取県までの日本海沿岸地方で生産されています。
この変わった名前の由来は?
へしこの産地である若狭地方では、樽に重石をかけて漬け込むことを「圧(へ)し込(こ)む」と呼んでいました。これが略されて「へしこ」となったという説が有力です。このほかに、魚を塩漬けにしたときに出る水分の「ひしお」(醤、干塩、干潮)がなまったという説もあります。
へしこの栄養は? 健康面での効果は?
青魚の脂肪に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)がコレステロールや中性脂肪を低下させ、生活習慣病の予防に役立ちます。また、鯖に代表される青魚はアミノ酸の化合物「ペプチド」を多く含み、血圧抑制や血液さらさら効果、糖尿病の症状改善効果などがあります。へしこの場合、青魚を糠漬けにすることによりペプチドが増加するので、効率的に摂取できます。
生きることは旅すること。ハイボール片手に、「通い猫」と「3人組」を愛でながら生きる会社員兼おかん。京都府綾部市在住。
https://www.instagram.com/utaco_1211