イラスト:あだす
ようこそ、北近畿チンミ共和国へ!
海の幸・山の幸に恵まれ、珍味が豊富な丹波・丹後・若狭地方をひとつの国とみなし、「北近畿チンミ共和国」と命名。これは全国津々浦々の「ふくたん」読者に向けて、北近畿の珍味の魅力を紹介する不定期連載記事です。 第2回目に取り上げる珍味は、「ユニークな味噌」。さあ、珍味ハンターのウタコ&カヨよ、取り寄せた珍味を調理して存分に味わい、その奥深さを全国の珍味ファンに届けてくれ!
珍味ハンタープロフィール
水田ウタコ
珍味を探し続けて三千里。珍味を求め、珍味を愛するアラフォー。旅先のスーパーで変わった食材を見ると小躍りする癖がある。気になるものはとりあえず食べてみるが信条。苦手な食材はきゅうり。
<Instagram>
https://www.instagram.com/utaco_1211/
カヨ
丹波地域の気になるモノやコトを女性ならではのゆるやかな視点で紹介する情報発信クリエイター。文章を通じて人生にキラリ灯がともるようなモノ・コトを伝えることが目標。渋い定食屋さんや、外観とメニューのギャップのあるお店をときめきレーダーで発見するのが楽しくなってきた今日この頃。
<Instagram>丹波しるみる
https://www.instagram.com/tambashirumiru/
今回、ウタコとカヨが取り寄せたのは次の2点。
※2人が同じ珍味を取り寄せ、異なる料理に挑みます。
■京のごはんや(京都府綾部市)
鹿肉味噌 1,200円(税込、以下すべて税込)
■マルヨ食品(兵庫県香美町)
えびの身入りえびみそ 648円
シカでタコとはこれイカに
長らくお待たせいたしました。
「北近畿チンミ共和国」第2弾。 出先でちょっとスーパーや道の駅に立ち寄るたび、私は珍味ハンターとなります。全国どこへ行っても、珍味はいねえが珍味はいねえがと、珍味なまはげと化すのです。
まずは鹿肉味噌から。
わたしの住んでいる北近畿では、年々増加する農作物の獣害を少しでも食い止めるために、ジビエを食べるということがそれなりに日常に馴染んできたように思う。しかし、スーパーで生肉が気軽に買えるものでもないし、まだジビエは「臭そう」「硬そう」というネガティブイメージが強いのも確か。地域の特産品になりつつあるのに、全国の家庭では気軽に食べることはできないのかしら……。
そんな杞憂を吹き飛ばしてくれるのが、こちらの鹿肉味噌。京のごはんや(京都府綾部市)
福知山の腕利きの猟師さんによる臭みのない鹿肉を使って、丁寧に作っているのだそう。ジビエのなかでも鹿肉は、いかに手際よく処理するかで味が大きく変わるとのこと。
商品に添えられたリーフレットに、「おすすめアレンジレシピ」がいくつか紹介されている。
うーん、どれもこれも美味しそうだけど、パッと目に入った「タコライス風ミソライス」なるものを休日のおひるごはんに作ってみることに。
タコライスとは、ご承知の通りタコが入っているわけではなく、タコス+ライスでタコライス。沖縄に住んでいたころは毎日のように食べていたわ……と懐かしく思いながら調理スタート。
まず用意するのは、卵。今日は目玉焼きにする。あとは葉野菜を適当にちぎり、ごはんを炊き、チーズとトマトを切る。以上。なんと簡単!
この夏の、燃えたぎるような暑さの前ではガスコンロの前に立ち続けるのも苦行だし、この夏休みの時期、子どもとのランチにぱぱっと作れるのはなんともありがたいメニュー。時短! お手軽! おかんの味方!
丼におのおの好きな量のご飯をよそい、ぱぱぱっともろもろを盛り付ける。そして最後に「鹿肉味噌」をどーんと乗っけて、完成~! 早い。
「鹿肉のタコライスやで」と子どもたちに告げ、それぞれの丼を食卓に並べていただきます。
子どもたちは「ん??? タコライス???」と頭にはてなマークを出しながらも美味しい美味しいと箸は止まらず。はっきり言って良く知っているタコライスからは程遠いけれども、このうえにちょっとサルサソースとかケチャップとかを掛けたらタコライス風にはなったのかもしれない。
鹿肉味噌があれば、残暑でちょっと食欲がわかないわ……ってときにも、どんどんご飯が進んじゃう! そうめんやうどん、冷ややっこなんかにも合うこと間違いなし。一家に一つ、冷蔵庫に常備しておきたい逸品だわ。
人生で一番美味しく作れたエビマヨ
続きまして、えびの身入りえびみそを頂きます。 こちら「マルヨダイレクト」にはえびみそを使ったレシピが載っていて、第一印象でビビっときた「えびみそエビマヨ」を作ってみることに。
エビマヨって簡単なようで難しい。お店で出てくるエビマヨのようなコクとか深みを出すにはどうしたらいいんだ……と数十年悩んでおりましたが、この度解決策をみつけました。これです。
まずはレシピ通りに調味料を計量。たっぷりめにえびみそを投入。この時点でふんわりとコク深いエビの香りがあたりを漂い、おなかが鳴っちゃう。ふむふむ、牛乳とレモン汁が隠し味ね。全ての調味料をまぜてなめらかにする。
臭みをとったエビに米粉をまぶす。この時点で子どもたちが代わる代わる台所にやってきて「今日のごはんはなんなん! わっ、エビやん!」と喜ぶ。いつの時代でもエビはテンションあがるもの。
エビをしっかり焼いてぷりっとしてきたところにソースを絡めて完成。簡単! 難しいことなんもしてないのにエビマヨができちゃった。
食卓に運び、いただきまー…と手を合わせるやいなや、左右から箸が伸びてくる。
美味しい! 美味しい! とみるみる減っていくエビマヨ。どれどれとわたしも、とひと口食べてみるとあらびっくり。えびみそなしでは出せなかったであろう旨味が、ぎゅぎゅっとエビに絡みついている。これはお店で食べる味そのもの。
あっという間になくなったエビの面影を追いながら、ソースとともにサニーレタスを食べると、これまたびっくり。レタスとこのソースが相性抜群! ソースが美味しくってレタスを食べる手が止まらない。もはやサラダもメインディッシュにしてしまうこのソース、只物じゃない。
「鹿肉味噌」と「えびの身入りえびみそ」、今回は中チンミ!
どちらの珍味も、一緒に残暑を乗り切る相棒になってくれそう。冷蔵庫のドアポケットにちょこんと置いてあるだけで心強いよ。
あら簡単! おつまみ上手になれる「鹿肉味噌」
前回「へしこ」を食べてから、珍味への興味が大幅にアップした私カヨ。私の「ときめきレーダー」は半径50メートルに珍味を発見すると反応するようにバージョンアップしたのです。
先日福井県を旅した時に「へしこソフトクリーム」なるものを見つけて、以前なら未知の味を感じるものは邪道であるとスルーしていたのに、思わず飛びついてしまいました。
へしこソフトクリーム甘じょっぱく和を感じるスイーツでしたよ。もし出会ったらお試しあれ。
さてさて、珍味の世界の扉を開けたばかりの新米珍味ハンターカヨが、今回取り寄せた商品はウタコ姉さん同じ。
最初に鹿肉味噌を使った料理を作ります。
鹿肉を初めて食べたのは20代前半のこと。海外からのお客様をもてなすために、私が住んでいる地域の猟師さんたちが捌きたての鹿肉を調理して出してくれました。
獣肉って臭そう、まずそう、ちょっと気持ち悪い(失礼……)と感じていました。それでも、鹿肉は赤身が多くヘルシーで、鉄分を牛肉の2倍も含んでいるんですって。
(農林水産省:ジビエの魅力より)
これは健康にいいし、地域課題(鹿による農作物被害)の解決にもつながります。だから私はジビエを山の恵みとして大切にいただきたいと感じたのでした。
しかし、鹿肉を食べたことのない都会暮らしの友人からは、「え! 鹿食べるの? まずそう」となかなか辛辣なご意見をいただいたことも。
確かに、都会の方にはなかなか馴染みがない食材かもしれません。
そこで鹿肉の美味しさをPRするのにも役立ちそうなのが、今回お取り寄せした珍味「鹿肉味噌」。
パッケージは和紙と水引をあしらった、なんとも女性受けしそうな和やかなデザイン。
冷蔵庫を開けるたび、この鹿肉味噌と目が合い、ほんわかしました。
甘辛い味噌と鹿肉ミンチのマリアージュは、そのままご飯に塗りたくって食べたら、何杯でも平らげてしまいそうになりますが、ここは家族みんなで楽しめるメニューに変身させてみます。
編集長がこの鹿肉味噌に出合ったとき、「ピザにしたら最高だった!」と話しているのを小耳にはさみ、想像したらヨダレがたらり。
5歳になる娘でも食べやすいように、今回は餃子の皮を生地にしてミニピザを作ることに決定しました。
餃子の皮に鹿肉味噌を塗り、トマトやスライスした玉ねぎ、コーン、ピーマン、チーズをのっけてオーブントースターで3分ほど焼きます。チーズがとけたらできあがり。
「ママなにつくっとるん、おいしいやつしとるん?」と娘からも声がかかるほど、香ばしくておいしそうな香りが漂います。
パリパリの生地に、酸味がアクセントのトマト、とろーりチーズなど、いろんな食感と味が押し寄せてきます。でも、なんといっても味噌の甘辛さとジューシーさを感じる鹿肉ミンチの旨味が最高!
一口かじって、あ!これはあれだね。ビールだね、ビールが飲みたいぞ!と息まいて冷蔵庫を開けるもビールは売り切れ。
しかしお酒と一緒に食べたいと思った私の想いは止められず、ビールの代わりに梅酒をひっかけながら、鹿肉味噌ピザをかじる。
梅酒、鹿肉味噌ピザ、梅酒、鹿肉味噌ピザ……と無限ループが発生するほど夢中になりました。
餃子の皮と、この鹿肉味噌さえあれば、後は残り野菜なんかを使って、ぱぱっと10分以内に極上のおつまみが作れます。
これはお酒好きのご家族におススメしたい。
残念ながらお肉が苦手な5歳の娘には、「ちょっといいわ」と言われてしまいましたが、裏を返すと「鹿肉ごろっとお肉感」があふれているということ。
お肉好きなお子様へは鹿肉の扉をあけるきっかけになる、食育にもつながるような珍味かも。
アレンジ次第で大変身「えびの身いりえびみそ」
続いての珍味体験は「えびの身いりえびみそ」。
なんだか早口言葉のような言い回しの商品で、舌を噛みそう。というのが第一印象でした。
これを手にした誰もが「The海のお土産」だとわかるパッケージ。
渋いですが、「長年愛されてきました」というマルヨ食品の自負を感じさせるデザインです。私は好きですよ。
「そのままおつまみとして食べる」と商品説明に書いてあったので、スプーンにとって一口なめてみる。
「おお! えびみそ濃厚〜」
しかし、じつは私は内臓系や甲殻類のみそが苦手なので、生臭さがどうしても気になる。 お好きな方は、もうこれでお酒やご飯が進むと思います。
はてさて、どのように頂こうかと思案していたところ、マルヨ食品さんのホームページに様々なアレンジレシピが掲載されているのを発見。
あらこれは親切丁寧。うちのように夫やお父ちゃんがみそ系好きでも、他の家族はちょっと苦手……なんて場合に役に立ちますね。
数あるレシピの中から「えびみそグラタン」をチョイス。
グラタンは私と娘の大好物。家にある材料で簡単にできるところも素晴らしい。
レシピにあるグラタンの具材は、むきえび、玉ねぎ、ブロッコリー。そこに今回はニンジンをプラス。
一般的なグラタンの作り方と同じように調理を進め、牛乳を入れホワイトソースを作ったところで「えびの身いりえびみそ」を投入。
量はお好みで調整とありましたが、今回はレシピ通りの分量をイン。
真っ白なホワイトソースがほんのりえびみその橙色に変化するのを見て、昔レストランで食べた旨味たっぷりなビスクスープを思い出し、期待が膨らみます。
グラタンソースにチーズをたっぷりかけてオーブンで焼いたら完成!
ふーふーパクリ、あつあつをいただきます。
うん、おいしい、おいしい……しかし、えびのみそがホワイトソースとチーズに負けてしまっている……。
それでも、えびの身の部分を口に含むとえびみその風味がかすかに広がり、生臭さはありません。「キタコレ、旨いえびみそ!」と、まさに”隠し味”的なものになりました。
新米珍味ハンターのカヨは、新米なりにさらにこの珍味を楽しむべく提案します。
「 えびみそグラタン」を作る場合は、レシピの分量よりもほんの少し「えびの身いりえびみそ」を増やしてみてはいかがでしょう。
生臭いと感じる人は、そうすることで生臭さを払拭しながらも、えびみその旨味を堪能できそうです。
ちなみにこちらのグラタンは、娘もおいしく完食いたしました。
「鹿肉味噌」と「えびの身入りえびみそ」、どちらも味噌珍味。
「味噌は七色の妙薬」ということわざがありますが、まさに使用方法(アレンジ)次第でいろんな味を出せる、伸びしろと旨味のある珍味でした〜! ごちそうさまです。
お取り寄せ先データ
◆鹿肉味噌(2022年9月より商品名は「蕎麦麹の鹿肉味噌」に変更)
店名 | 京のごはんや |
運営 | 株式会社由良 |
住所 | 京都府福知山市下佐々木612番地 |
https://www.instagram.com/kyounogohanya/ | |
HP | https://www.kyonogohanya.com |
★お取り寄せ オンラインショップ | https://kyounogohann.base.shop/ |
◆「京のごはんや」麹味噌の販売店
【さんの丸】 京都府福知山市内記10-64 | https://www.instagram.com/sun.no.maru/ |
【産直野菜ふくちマルシェ】 京都府福知山市東羽合町176 | https://www.instagram.com/fukuti_marche/ |
【あやべ特産館】 京都府綾部市青野町亀無1番地の2 | https://www.instagram.com/ayabetokusankan/ |
◆えびの身入りえびみそ」
店舗 | マルヨダイレクト |
住所 | 兵庫県美方郡香美町香住区香住1234 |
★お取り寄せオンラインストア | https://www.maruyo-food.co.jp/ |
direct@maruyo-food.co.jp | |
TEL | 0120-215-123 平日9:00~17:00 |
★北近畿地方の珍味メーカーのみなさまへ★
ふくたんは「北近畿チンミ共和国」で取り寄せる珍味を調査しています。「うちの珍味も記事で紹介してよ」「ウタコさん、カヨさん、うちの珍味を一度食べてみて」という連絡をお待ちしております。
ふくたんのメール
mailto:fukutan.net@gmail.com
もしくはInstagramのDMで倉田楽までご連絡ください。
https://www.instagram.com/fukutan_net/
ふくたんチンミニ知識
味噌は発酵食品の代表
味噌は醤油とともに、大豆を主原料とした日本独自の発酵食品です。タンパク質分解酵素が原料の大豆や麦のたんぱく質を分解して、うま味の成分であるアミノ酸を引き出します。
江戸時代中期まではおかずだった?!
味噌は醤油と並び、日本人に最も身近な調味料。漬け床や食品の保存用に使ったり、具を入れて味噌汁として飲んだりするなど、とても重宝します。江戸時代中期までは、ごはんにのせたり、おにぎりにぬったりした食べる「おかず」のような存在であったと考えられています。
地方色が豊かな味噌
味噌は生産地と消費地が密着して発展しました。地方ごとに点在する味噌は、気候や風土、農産物、住民の嗜好性などによって、味や色調の方向が決まります。信州味噌、西京味噌、津軽味噌、仙台味噌がその代表です。今回紹介する「鹿肉味噌」はジビエ、「えびの身入りえびみそ」は魚介・水産加工品のカテゴリーに入ります。