ほぼ毎日ランチ部 洋食 グルメ ふくたんコラム

※2022年2月閉店 OYSTER+DINING Baccarne(バッカルネ)【福知山/ブラッスリー/食パン】クラシックフレンチをベースとした魅惑の洋食

【2021年9月某日のランチ】
メインランチ(自家製パン付) 1,980円

【2021年10月某日のランチ】
パスタランチ(自家製パン付)1,650円
サンドウィッチ(フレンチフライ、キッシュ付)1,100円

「ねぇ、らくちゃん(親しい人は、私のことをそう呼ぶ)、ブラッスリーってなんなん?」

Mが不意に質問した。彼女は私のことを歩くウィキペディアだと勘違いしているフシがある。

「ブラッスリーはフランス語で、大衆的な居酒屋のことやね」
「ふ~ん、そうなんや。ところで、9月16日、福知山駅南口のアールイン福知山の1階に、ビーエーシーシーとかいうお店がオープンしたって知ってる? そこブラッスリーなんやそうやけど……。わたし、お腹すいてるし……。そのお店、ランチもやってるってInstagramに書いてあったんやけど……」
「Mちゃん、その店、Baccarne(バッカルネ)っていう店名だよ」
「あら、わたしって、バッカだね(笑)」

そんなわけで、美食に恋する惑星の住人合計2人は、9月某日午前11時過ぎ、まだ体験していない味を求めてBaccarneへ向かった。彼女は彼女の、私は私のクルマを駆って、 アールイン福知山 の駐車場に到着した。

ほぼ毎日ランチ部、略して「ほぼラン」。今回は「ランチDEデート」とシャレてみよう。

店に入る前にジャケットのボタンをとめる私、倉田楽。
Baccarneの玄関。黒板メニューが出迎えてくれた。

Baccarneは、意表を突く店名の高級食パン専門店「いつかの馬鹿ップル」(兵庫県豊岡市)の系列店として9月16日に誕生した。 Baccarneでも同店の食パンを販売しており、モーニング(7:00~11:00)と一部の料理にその食パンが使われている。

購入した食パンの持ち帰り用の紙袋はインパクトのあるイラスト。

Baccarneは、全国の産地から仕入れた牡蠣を使った料理やクラシックフレンチをベースにした洋食を提供してくれる。牡蠣以外は、但馬・丹波地方や舞鶴産の食材を使っているため、福知山市周辺在住のゲストは地元でとれたものを口にすることになるのだ。

店内はゆったりとした空間にカウンター席とテーブル席がもうけられ、テーブル席は隣の席との距離をおくようレイアウトされている。 「ちょっとリッチな気分を味わえる、大人の店やん」と、Mは満足そうだ。

道路に面する場所に設けられたカウンター席。
奥まった場所にもうけられたシックなテーブル席。
アールイン福知山のエントランス側にもうけられたテーブル席。

当日のメニューを見て、私たちはメインランチ(自家製パン付)1,980円を注文した。

【Baccarneの9月某日のメインランチ】
前菜プレート(スープ付)
八鹿(ようか)豚肩ロースのグリエ
当日のデザートは下記の2品
ガトーショコラプレートorクレームキャラメルプレート
コーヒーor紅茶

赤海老とほうれん草のキッシュ。サラダメランジェ。ヴィシソワーズ。生ハム。ナスのタルタル。ズッキーニとパプリカのグリル。きのこ類のマリネ。
手前のヴィシソワーズは冷製スープの定番。冷たいポロネギ風味のジャガイモのポタージュ。 ヴィシソワーズは「(フランスの)ヴィシー地方の」という意味のフランス語。
メインランチとパスタランチに付く自家製パンとオリーブオイル。オリーブオイルを入れたガラスの小皿はまさにモダンシックだ。

前菜プレートを真上から見ながら、Mはつぶやいた。
「食材の色、カタチ、全体の見た目が美しい。これ、『目においしい料理』やね。白いお皿をキャンバスにした、食べられるアートみたい」
クラシックフレンチは、ゲストをまず視覚で楽しませてくれるのだ。
ひと皿に数点の料理をきれいに鮮やかに盛るセンスと技術を、私や彼女は持ち合わせていない。だから盛りつけの上手な料理人を無条件でリスペクトしてしまう。

「それに……」と、ヴィシソワーズをスプーンですくって口に運びながらMは話を続けた。

「これだけ品数があるのに、ひとつひとつの料理が丁寧に調理されているのがわかる。加えて、前菜とパンのマッチングが絶妙なのよ。マッチングサイトで恋人を見つけるのは難しいけど、ここの料理とこのパンは理想のカップルかもね」

ヴィシソワーズの穏やかな甘さが口の中に広がり、私も上機嫌。でも、いつもの饒舌は「ふくたん」事務所の金庫にしまっておき、今日は彼女の聴き手に徹しよう。

赤海老とほうれん草のキッシュを口に入れる寸前の私。ゆるゆるとした顔はリラックスしている証拠。

やがて当日のメインである八鹿豚肩ロースのグリエが運ばれてきた。八鹿豚肩ロース自身が「私が主演です」とあいさつしなくても、伝わってくる並々ならぬ存在感。肉が威風堂々としているのだ。
但馬牛で名高い但馬には、“幻の豚”とも呼ばれる希少なブランド豚が育てられている。それが八鹿豚である。

Mはうっとりした瞳で八鹿豚肩ロースを見つめ、「相手にとって不足なし。存分に食べてやる!」と意味不明の決意表明。フォークを肉に差して口へほうりこみ、噛む、噛む、また噛む。そしてゴクリと飲み込んだ。
と、次の瞬間、Mはやや興奮気味に感想を口にした。3日間ためておいたような笑顔を添えて。

「八鹿豚肩ロースのグリエ。これ噛んだ瞬間に、やわらかいのがわかるお肉や。ん~、も~、肉汁のうまみがじわ~っと広がって、肉も私もとろけるわぁ~。うまくいえないけど、舌の上で始まる大人の味覚の饗宴やわ~」

私は彼女の口の中で始まった「味覚の饗宴」を想像し、口の中に約5000~1万個あるという味覚の受容器がどんちゃん騒ぎしている様子を思い浮かべた。 私も肉を口に運んだ。八鹿豚本来の甘さに加え、繊細で奥深い味が舌の上でころがっていくのがわかった。

当日のメイン料理。八鹿(ようか)豚肩ロースのグリエ。付け合わせのブロッコリーとアスパラガスのグリーンが映える一品。

八鹿豚肩ロースのグリエに身も心も奪われたかのようなMは、最後の1片を口にしたあと、「ふわ~っ」と言葉にならない声をもらした。

やがてテーブルの上に到着したデザートを見つめ、「デザートがおいしいと満足感が2倍になるよね。5倍増という説もあるけど……」と、デザート論を展開。
「その店でその日最後に口にした味が記憶に残るのよね」 そう言ってMはクレームキャラメルプレートの写真を撮る前に、胃袋に流し込んでしまった。

「あらら、オレ、デザートの写真、半分欠けたのしか撮ってないよ」

「それほど夢中になってデザートを食べた……と、正直に『ふくたん』に書けばいいんじゃないの。あははは。知らんけど」

当日のデザートより。「プリン大好きおじさん」の私は、クレームキャラメルプレートをセレクト。写真の右側はすでに食べかけだったので、その部分を隠すためにこんな写真になってしまった。

私はいつもわちゃわちゃと東奔西走しており、平日のお昼に、ゆっくりランチをとる機会など滅多にない。だから、丁寧な料理を供してくれ、目も舌も胃袋も満足させてくれる、モダンシックで大人向けの店を見つけたら、そこは激務の谷間にキラっと光る食のオアシスとなる。 そのような理由から、Baccarneがアクセスのよい福知山駅南口にオープンしてくれたことを心から歓迎したい。

Mは「らくちゃん、今度はディナーに誘って、ね」と手をふって彼女のクルマに乗り込んだ。私は「やれやれ」と心の中でつぶやき、自分のクルマのドアを開けた。

2人は異なるクルマに乗り、異なる時間を生き、再会したときだけ大人の時間を共有する。だから、そのときに食する料理はとても大事なのだ。たぶんMもそう思っていることだろう。

こうして「ほぼラン」特別編「ランチDEデート」は幕を閉じた。

食事を終えて店を出た瞬間の私。「笑顔は雄弁」とはこのことか。

後日談がある。じつはこのあと、10月某日、Baccarne で「ふくたん」スタッフとランチミーティングを開いた。その際に私が食したランチを記しておく。

【Baccarneの10月某日のランチ】
<パスタランチ>(自家製パン付)1,650円
前菜プレート(スープ付)
ペスカトーレビアンコ
デザートのフランボワーズシャーベット コーヒー

<サンドウィッチ>
但馬鶏胸肉のコンフィとトリュフ風味の玉子サンド 1,100円

ペスカトーレビアンコは、海老や牡蠣、アサリなど魚介のうまみがぎっしりつまったパスタ。

もちもちのパスタ麺は、麺そのものが香ばしくて美味だ。 おそらく産地の異なる海老と牡蠣とアサリが、生まれてはじめてこの皿の上で肩を寄せ合って”同居”する様子は、一期一会の”魚介シェアハウス”かもしれない。

そんなことを考えながら、麺の下に隠れていた牡蠣をフォークでかきだして見つけた瞬間、私は「大当たり!」と心の中で叫んだ。

薄いピンク色の皿に盛られた前菜。
当日、私が選んだパスタはペスカトーレビアンコ。
パスタ麺の中に牡蠣を見つけ、無邪気に喜ぶ私。
パスタランチのデザート。私が選んだのは、フランボワーズシャーベットとバスクチーズケーキ、フルーツ(オレンジ、イチジク、キウィ、ブドウ)がひと皿に盛られたデザート。イチゴを使ったフランボワーズシャーベットは甘酸っぱさがたまらない。濃厚で口どけのよいバスクチーズケーキとの相性もバツグン。 

しゃべるだけで腹が減り、腹が減るとお地蔵さんのようにじっと動かなくなる私は、パスタランチだけでは夜までエネルギーがもたないと考え、サンドイッチ(ドリンク付)も注文した。

但馬鶏胸肉のコンフィとトリュフ風味の玉子サンドは、一般的な女性であればこれだけでお腹がいっぱいになるほどのボリュームだ。
もともと香ばしい食パンに、但馬鶏胸肉のコンフィの肉汁がじわ~っとにじみ出ている。トマトの酸味と水分により、しっとり感が生まれ、料理名にある「トリュフ風味」も効いている。姿を見せずとも”風味”だけでゲストを満足させるトリュフの偉大さに感服する。

私はフランス貴族がピクニックでこのサンドイッチを食べる姿を連想した。玉子サンドならぬ「王子サンド」。「ワンランク上のサンドウィッチ」とはまさにこれだ。

ちょっとリッチな気分にしてくれるサンドウィッチ をほおばりながら、私は次回の「ほぼラン」でとりあげる店のリストアップを始めた。まだ足を踏み入れたことのない店で体験する初体験の味を想像しながら。

但馬鶏胸肉のコンフィとトリュフ風味の玉子サンド。
「ふくたん」ランチミーティング後、Baccarneオーナーで料理人の奥田会造さんと一緒に撮影。
アールイン福知山のエントランス。Baccarneは向かって右側にある。
店名OYSTER+DINING
Baccarne(バッカルネ)
住所福知山市駅南町3-20-1 アールイン福知山1F
TEL0773-24-3421
営業時間モーニング 7:00~9:00
ランチ        11:00~14:00
ディナー     18:00~ラスト
定休日月曜日
※日曜はランチのみ営業
Instagram
https://www.instagram.com/b_accarne/
店舗販売(食パン)いつかの馬鹿ップル
HPhttps://itsu-baka.com/
Instagramhttps://www.instagram.com/itsu.baka/

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