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喫茶まほろば【福知山/喫茶/カレー】オリジナルカレーが人気の老舗喫茶店

昭和の香りが漂う喫茶店で
カレーを食べて思い出ぽろぽろ

Vol.6 【2020年6月某日のランチ】
「喫茶まほろば」のカツカレー 850円

「らくさん、カレー好きなら『まほろば』に行ってごらんよ。新たな発見があるかもしれないよ」
親切な友人にそう教えてもらい、福知山駅からほど近い「喫茶まほろば」へ向かった。「まほろば」といえば、理想郷を意味する古語だ。これを店名にした店主にも興味がある。午後1時半過ぎ、店の扉を開けた。

若い人なら「しぶ~い」と言いそうな玄関。

一瞬、めまいがした。1980年代にタイムスリップしたかのような感覚に包まれたからだ。年配の店主がひとり。やや薄暗い照明、カウンターと4人掛けのテーブルが4卓。入口の近くにコイン式公衆電話。壁に大きな掛け時計。本棚には漫画本がずらり。控え目な音量でジャズが流れている。
「昭和の香りが漂う純喫茶」という表現がこれほどふさわしい店は滅多にない。”昭和度数”がすこぶる高いのだ。

歴史を感じさせる立派なカウンター。
店内に設置されたコイン式公衆電話を見たのは何年ぶりか。
年代ものの壁掛け時計。おそらく昭和時代の産物だろう。

昭和カウンターに座り、店主に「ふくたん」の説明を手短にしてからカツカレーを注文した。カレーの種類には、カツカレーのほかに、チキンカレー650円、ビーフカレー650円、ハンバーグカレー850円、夏限定のナスとトマトの夏カレー850円がある。辛さは、中辛、大辛も選べるとメニューに記してあったので、辛さの度合いを聞いた。
「うちのカレーは普通の辛さでも、まあまあ辛いよ。ほら、カレー好きは辛いのを好むでしょ」
「今日ははじめて挑むので、普通で」
「はい。少々お待ちください」

店主はカウンターの奥にある厨房に入り、調理を始めた。カツを揚げている様子が伝わってくる。
カツカレーができあがる間、「カツ」を用いる言葉をいくつか挙げた。「トンカツ」に始まり、「勝(カツ)海舟」「勝(カツ)新太郎」を経て、「婚カツ」「就カツ」とよどみなく浮かんだ。さらに「カツアゲ」「愛は勝つ(カツ)」と続いた。その後、「お金がなくて生活がカツカツ」という言葉が浮かんだ頃、店主がカウンターに登場。
「はい、どうぞ」と言って店主はカウンターにカツカレーを静かに置いた。

トロミの強いルー。サクサクの衣が香ばしいカツカレー。

エスニック柄の皿。白いごはんが見えないほどの面積を占めるカレー。その上に揚げたてのカツが横たわっている。カレーをスプーンですくって口へ運ぶ。
うむ、トロミの強いカレーだな。舌がピリリとする程度の心地よい辛さだ。口に含んで舌をくるくるまわせば、辛さがジンジンと広がっていく。辛口なら、もっとインパクトがあるのか。辛口でもよかったナと考えつつ、カツをほうばる。衣はサクサク。肉は脂身がなく、噛めば噛むほど肉汁が静かに舌の上に降りてくる。店内に流れるジャズのように、口の中でカレーとカツのセッションが始まった。
「マスター、このルーはもちろんオリジナルですよね?」
「そうだよ」
ほぐほぐ、ウハウハ、パクパク。カレーのコクを舌でたしかめながら、カツとカレーのセッションはあっけなく終了した。完食。
「カレーのコクは、いろんな食材を混ぜ、味が重なって生まれるものですよね。こちらのカレーは……」
「そうだね、トマト、リンゴ、生姜、ニンジン……いろいろ入っているよ」

『ゴルゴ13』『ハロー張りネズミ』など大人の漫画が充実。
コーヒーを飲みながら漫画を読みたくなるテーブル席。

カレーの話を終え、店名の由来と歴史を聞いた。店はこの地で約40年営業を続けてきたという。
「昔は今よりずっと忙しかったよ」と、店主は淡々と話す。おそらく約40年間、カウンター越しに数えきれない人と話をし、相槌を打ってきたのだろう。そしてこの場所で40年という時間が過ぎていった。
店主の姿が不意に大学生の頃に通った喫茶店のマスターと重なった。そのマスターは寡黙だが、話をしているとつくづく安心感を覚えたものだ。当時の思い出がぽろぽろとあふれてきた。
「また来ます。次はカレーの辛口をぜひいただきます」
カレーが人気の「まほろば」は、はじめて訪れたのになつかしい喫茶店だった。若い頃の思い出がそこに膝を抱えてうずくまっているかのような場所だった。

店名喫茶まほろば
住所京都府福知山市末広町2-29
電話番号0773-23-7608
営業時間8:30~18:00
定休日日曜日・祝日

※料金と上記データは2020年6月24日時点のものです。

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