前代未聞のスパイスの嵐
福知山にこの店がある幸運
「スパイスカレー ガルミー」のガルミースペシャル 1,500円 / チキンカレー 900円
7月某日、快晴。目指したのは、昨年12月にオープンした「spice curry Garmii(スパイスカレー ガルミー)」だ。その名のごとくスパイスカレーの専門店である。
【注釈】ガルミーは2022年6月10日、次の住所へ移転しました。現住所:京都府福知山市字土小字猪ノ坂85番地 ◆毎週木曜、第2・4水曜定休
医食同源をコンセプトに掲げ、小麦粉を使わず、無添加・無化調。使う油はすべてオリーブオイル。つまり、ヘルシーなスパイスカレーを提案している店なのだ。
日本生まれのスパイスカレーはいまだ進化の過程にあるため、辞書に載るような定義はない。主だった特徴は次のようなものだ。
「小麦粉でつくったルウを使わず、スパイスと野菜などを合わせた自由な発想のカレー」「野菜と一緒にワンプレートになっている」「食べる前に大量のパウダースパイスをふりかける」「食感の異なるカレー2種をあいがけするものもある」。
ふむふむ、要するに、店主の独自の発想でつくられた”自由形のカレー”ということか。
じつはガルミー訪問は2度目。初回の訪問時、お店の前にタイの三輪タクシー「トゥクトゥク」が2台とめてあったので、「ここは東南アジアなのだ」と理解し、脳内では軽く国境を越えてしまったものだ。
初回に食べたのは、3種類のカレー(ドライキーマ、チキンカレー、今週のカレー⇒レッドカレー)とトッピング(スパイス煮卵、クリームチーズ、とろけるMIXチーズ)が全部のっている「ガルミースペシャル」(1,500円)だった。これにコーヒーがつく。
3種類のカレーが大きな皿に肩を寄せ合って同居。まさに華麗(カレー)なるシェアハウスだ。
テーブルに運ばれたガルミースペシャルを前にして、店主の井上さんに3種類のカレーの説明を受けた。ところが、そのカレーの複雑なビジュアルに目がびっくりして、うわのそらで聞いていた。たとえるなら、野球とサッカーとバスケットボールの試合を同時に観戦しているようなものだったからだ。つまり、どこに、何に、集中すべきなのかわからなかったのである。
洒落たスプーンですくって食べれば、はじめて口にするスパイスの味と香りに圧倒された。「な、なんだ、これは?!」
オレのカレーの概念を凌駕し、新たな地平線を指し示してくれているではないか……。ドライキーマ、チキンカレー、レッドカレーを交互に口へ放り込む。異なるのは食感だけではない。幾層にも重なりあっているため、ひとことで表現できない複雑にして深い味だ。いや、深さだけでなく広さも感じられた。福知山市内にいながら、東南アジアのどこかの国をさまよい歩いているかのような感覚に陥った。
前代未聞にして空前絶後の風味。異国から届いた数十種類のスパイスが口の中で小さな嵐となって吹き荒れた。その嵐に翻弄された。
その日は、”ガルミー初体験”にいささか興奮し、混乱しつつ店をあとにした。「これは一度で理解できるほどのわかりやすいスパイスカレーではない」と悟り、再チャレンジを誓ったのだ。
そして7月某日、14時過ぎ。ここで今回の文章の冒頭のシーンに戻る。今度は「チキンカレー」(900円)に挑んだ。
フェネグリークの葉を乾燥させた「カスリメティ」というドライハーブが全体にふりかけられてある。見た目からして香ばしい。一気にテンションが上がった。
いざ。パクパク。サーっと広がるスパイスの味。ふたたび異国の風が吹く口の中。チキンはやわらかい。香りが肉の中にも隠れており、深くしみとおっている。噛めば噛むほどやさしくほぐれる。体温が上がっていくのがわかる。
これはオレの身体が欲している「何か」を秘めた食べ物だと理解した。おそらく何度食べても飽きることがないだろう。その理由は?いや、奥深いものに対して、すぐに解答を求めるのは無粋というもの。これから先、何度も店に通い、じっくり、たっぷり味わい尽くそうではないか。福知山にガルミーがある幸運に感謝しながら。
店名 | スパイスカレー ガルミー |
住所 | 京都府福知山市篠尾新町2-11 |
電話番号 | 0773-24-0720 |
営業時間 | 11:30~15:00 |
定休日 | 月曜日・火曜日 |
※上記データと料金は7月1日現在のものです。
倉田楽 京都・福知山事務所代表。フリーの編集・ライター。美しいフォームでの「自撮り逆立ち」の追求をライフワークとする、神出鬼没で予測不能の男。