うどんか、それとも丼か?
両方食べたいときはセットで解決
「やすいや」のミニカツ丼セット800円
「やすいや」(福知山市荒河新町)は、手打ちそば、自家製うどんの店。特徴のひとつは、品数がやたら多いことだ。オレは「品数の多いうどんそば処」と呼んでいる。
単品だけでも、そば約30品目、うどん30約品目ある。これに加え丼も種類が豊富だ。玉子丼、キツネ丼、カツカレー丼、鰻丼など充実している。さらに丼にはうどん・そばを合わせたセットがある。たとえば親子丼は単品で720円だが、親子丼セットの場合、親子丼+うどん920円、親子丼+そば980円となる。
このほかにも、「天釜セット(1180円)」(ミニ玉子丼、天ぷら・釜揚げうどん、ミニサラダ)のように、「○○セット」と題するセットメニューも充実している。もともと品数が多く、それをセットで組み合わせる方法を採用しているため、「やすいや」の品数はどんどん増えたのだろう。
「今日は絶対にざるそばを食べる!」「今日は鰻丼に決めてきた。感動する準備はできている!」といった具合に強い意志を持ってランチに臨む場合は問題ないが、何も決めずに行けば「うーん、何にしようか」と深く悩むことになりかねない。
6月某日、11時40分に訪れたときも、店内には悩み多きグループがいた。
「そばにするか、うどんにするか、ごっつう迷ってるわ」
「うどん屋さんの丼はうまいっていうから、ここは丼を選ぶか……いや、うどんのセットか……」
「私はそばが好きやねん。でも、エビ天丼もええなぁ。カツカレー丼も食べたいなぁ~。わ~、悩むわぁ、マジで(笑)」
そんな声が店内に飛び交うなか、じつはオレも悩んでいた(笑)。「ほぼラン」でまだ取り上げていないうどんを食べようと思ってこの店に来たというのに、メニューを見ていたらカツ丼も食べたくなったからだ。
「うどんか、それともカツ丼か。さあ、どうするオレ?」と大げさに悩んでみたあと、簡単な解決策として「ミニカツ丼セット800円」(うどん、ミニカツ丼、サラダ付)を注文したのだった。我ながら見事な意思決定である。
待つこと7~8分。デーブルの上にミニカツ丼セットが届いた。器の大きさからすれば、うどんがメイン、カツ丼がサブだ。
うどんはかけうどんで、具はおぼろ昆布とカマボコ一切れ。麺は細くやわらかい。つるつる。つゆは透明で、味は控えめだ。ごっくん。ほのかな甘みが舌の上を走る。
うどんのつゆを半分残し、小ぶりの器に盛られたソースカツ丼に挑んだ。カツの下にレタスが敷いてあり、その下にごはんが隠れている。
カツのソースは甘辛く、肉はずいぶんやわらかい。失礼ながらあまり期待していなかったが、カツ丼はよい方向に裏切ってくれた。どうやらオレはこの店のカツ丼をあなどっていたようだ。
ソースとカツの相性がよく、カツとレタスのコラボは新鮮だった。うどんはあっさり味、ソースカツ丼はこってり味。要するにミニカツ丼セットは「あっさり」と「こってり」を一度に味わえる稀有なセットなのだ。これは大きな発見だった。
カツをほおばる。カツの食感とソースの甘辛さを堪能する。シャキシャキのレタスが口の中の「こってり」をほどよく中和してくれる。うどんのつゆをすする。箸が進む。あっという間にゴールが見えてきた。
「こってり」と「あっさり」は口の中で混ざりあって和音を奏で、静かに食道を通過していく。通過していった。完食。うむ、満足。
「やすいや」はうどん・そばと丼もの、その両方を一度に食べたいときの、見事な解答をいつもオレに教えてくれる。
たとえば今日から10日後にカツカレー丼とうどんを同時に食べたくて、いてもたってもいられなくなったとしよう。そのときは、カツカレー丼にミニうどんがつく「カツカレー丼セット1090円」を注文すればよいのだ。覚えておいて損はない情報である。
店名 | うどんそば処やすいや |
住所 | 京都府福知山市荒河新町76 |
電話番号 | 0773-22-6654 |
営業時間 | 11:00~14:30 17:30~20:00 |
定休日 | 月曜日 |
※料金と上記データは2020年6月30日現在のものです。
倉田楽 京都・福知山事務所代表。フリーの編集・ライター。美しいフォームでの「自撮り逆立ち」の追求をライフワークとする、神出鬼没で予測不能の男。