兵庫県丹波市からやって来たカヨちゃん&ドラマちゃんが福知山市中心部を実際に歩き、肌で感じたエリアの魅力をイラストと文章で紹介する特集の第2弾。今回めぐったのは、福知山市のシンボル「福知山城」を中心とするエリアです。
福知山城探索後、ハンドメイド体験や人気セレクトショップ訪問でウキウキ、文化財や工場見学で新発見、お土産選びでわちゃわちゃ、地元で人気の飲食店や通好みのダイニングバーで興奮MAX。
そんな2人のプチ旅観光が、福知山をよく知らない人には観光の手引きに、よく知っている人には福知山の魅力再発見につながれば幸いです。
【前編】福知山城探索&ハンドメイド体験編 公開中
【中編】ランチ&話題のショップで女子力アップ編 公開中
【後編】歴史的建造物・老舗せんべい工場見学編 ←今回はココ!
【最終編】 福知山グルメと無国籍ナイト 12月18日(金)ころ公開
【番外編】 カヨちゃんとドラマちゃんの「おみやげセレクション」 12月18日(金)ころ公開
取材・文=小林佳代子(カヨちゃん)
イラスト=まつざきさいか(ドラマちゃん)
カヨちゃん(小林佳代子)
Webメディアでライフスタイルの提案のほか、丹波地域の気になるモノやコトを女性ならではのゆるやかな視点で紹介する情報発信クリエイター。
現在3歳の女の子の育児中。カフェやスイーツが大好き。気になるスポットを発見したら誰かに紹介したくてうずうずしてくる性格。ドラマちゃんとは不定期でインスタライブ「画面越しのランデ ブー」を開催し、丹波周辺の美味しいものを紹介している。
LINK ブログ「ここちいい暮らしノート」/「丹波しるみる」インスタグラム / カヨ☆ここちいい暮らし探究ブロガー
ドラマちゃん(まつざきさいか)
仙台市生まれ、南仏育ちのイラストレーター/デザイナー。海外をうろうろした後、2019年に縁あって兵庫県丹波市へ移住。2020年春、仕事が一度根こそぎ吹っ飛んだのをきっかけ に、オンラインスナック「ドラマ」を開店。チーママとしてお客のドラマをネタに描いていたところ、カヨちゃんと出会う。こう見えて下戸で元コミュ障。著書に絵本作品『なーんだ』『あまのいわと~らんぼうなとらとやさしいらいおん~』 がある(共にsaïcaの表記でWAVE出版より発売)。
LINK Instagram / Saicaホームページ
【福知山城周辺エリア】プチ観光MAP
今回まち歩きした全体マップはこちら!
今回は「歴史的建造物・老舗せんべい工場見学編」
赤で色付けした05と06のスポットをめぐる記事です。
05~06の各イラストをクリックすると、各スポット紹介記事へ移動します!
05.足立音衛門
和洋折衷の大正浪漫が香る
歴史的建造物&お宝見学
「Crouka」でのオリジナルファブリックミスト作りで女子力がちょっぴりアップした(かもしれない)2人。次は「知的なプチ旅観光」とでもいうべき歴史的建造物の見学です。
翻訳の仕事をする予定だったかずちゃんですが、「めっちゃ楽しいから、2人についていくわ」と予定を変更して参加してくれました。 3人が訪ねたのは、「丹波生活衣館」から徒歩2分ほどのところにある「足立音衛門」京都本店。栗を使ったスイーツで知られる焼き菓子専門店です。
「究極のパウンドケーキ」と呼ばれる1万円超えの栗のテリーヌ「天」がテレビや雑誌で話題になったこともあり、福知山を訪れる観光客もよく立ち寄る人気店です。
1912(大正元年)に建てられた邸宅の主屋が店舗(京都本店)になっており、敷地内には洋館や御殿、撞球場(ビリヤード場)、茶室などもあるそうです。建物は京都府の指定文化財になっています。
外観はいつでも見学できるのですが、「中はどうなっているんだろう?」と3人はソワソワ。
すると案内してくれる営業部長の土田和典さんが、「今回ふくたんの取材ということで特別に洋館と蔵の中を案内しましょう」と申し出てくれました。
な、なんと! これはワンダフルな展開。
まず案内してもらったのは、時代劇で登場するような重厚な土蔵。
重たい扉をぎぎっと開けてもらった瞬間、「わぁっ~」と思わず声がもれてしまいました。
手入れの行き届いた古民家カフェのような空間がそこにあったのです。
レトロな掛け時計、丸型錠前の和箪笥、その上に並ぶアンティークの皿。オーナーが集めたそれらの骨董品は、まるで私たちの訪問を待っていてくれたかのようです。
「ここにも珍しいものがありますよ」と土田部長が開けてくれた和箪笥の引のき出しの中には、栗の形をした、手のひらサイズの「何か」がズラリ。
「えっ、これなんですか?」
「これは栗のもなかの型なんです。栗好きのオーナーがあちこちから購入してコレクションしているんです」
もなかの型を見るのは初めてです。
じつはうちの実家もお菓子屋なので、もう使うことがなくなり、倉庫で眠っている饅頭やベビーカステラの型などを見たことがあります。でも、もなかの型がこんなに愛らしいフォルムをしているとは知りませんでした。
まさに”お宝発見”といった気分。
いっぽう、そのころドラマちゃんは別のモノに心惹かれていました。
友禅や江戸小紋の着物の柄を染めるときに使う「伊勢型紙」という型紙に興味シンシン。
こちらもオーナーや従業員の皆さんが見つけたときに購入し、保管しているもので、足立音衛門のお菓子の包み紙の模様として実際に使われています。
「細かい柄がいっぱいある。すごいね、こんな模様を手作業で切り抜いて作ってるなんて、職人技」とドラマちゃん。まじまじと見入っています。
アーティストとして、どこか共感するものがあったんだろうな。
と、そのとき、土田部長はこんなふうに説明してくれました。
「古いものは、それ以上古くならないんですよね」
そうか! そうですよね。
最新のものは時間の経過とともに、どんどん古くなっていきますよね。でも、すでにアンティークとなっているモノは、ずっと古い状態のまま。だから価値は変わりません。製造された数が少なければ、価値が高まるモノだってあります。
モノでなくても、たとえば100年、500年、1000年と長く受け継がれてきた伝統的な建築様式や和のデザインは、普遍的な様式美にあふれています。唐草や青海波など日本人好みの模様は、その代表ともいえますね。
最近話題のアニメに登場する市松模様や麻の葉模様もそう。古くならないどころか、若い人には「めっちゃ可愛い、おしゃれな柄」「この新しい柄、ほっとするわ」といった具合に新鮮に映るみたいです。
土田部長の言葉は、私に多くの「気づき」を与えてくれました。今回のプチ旅観光における大きな発見です。
ここで土田部長から驚愕の事実をお聞きしました。
お菓子の包み紙や販促物などのデザインは、すべて自分たちで考え作っているというのです。
えっ?! 全国の百貨店にも進出している有名な足立音衛門さんだから、てっきりデザイナーやプロデューサーなどにデザインを依頼しているのだと思っていました。
でも実際には、創業当時から、従業員みんなで協力し、「こんなデザインが合うんじゃない?」「この紙の組み合わせがいいかも」「この季節に合うディスプレイは?」などと話し合いながら決めてきたということです。
次に案内してもらったのは、御殿や土蔵といった和の建築とは趣の異なる2階建ての白い洋館。ひとつの敷地に和と洋の建物が両立し、景観をつくりあげています。
洋館は御殿へ続く玄関でした。
2階のホールの天井にはシャンデリアが輝き、来賓をおもてなしする場所だったとか。
現在は、包み紙のほか、商品をディスプレイする際に使う骨董的価値もありそうな焼き物などをストックしておく場所になっています。
シャンデリアは残念ながらもうありませんが、来賓室はマンガや映画で見たことのある「大正モダンな空間」だったのかなと想像するだけで気持ちが高ぶります。
海外のお客さんを招いて、ドレスを着た貴婦人と燕尾服を着た紳士が舞踏会を楽しんでいたのかな~。もしそこに私がいたら……ワオっ……大正浪漫だわ。『はいからさんが通る』の世界だわ。
ふふふっ、私しか見ることのできない「空想的時間旅行」。これもプチ旅観光の醍醐味かも。
京都府の指定文化財になっている建造物の内部見学は、とても貴重な体験でした。足立音衛門さん、ふくたんさん、こんな機会をありがとう。
足立音衛門の歴史的建造物と本店の連絡先・営業時間など詳細はこちらをcheck!
ひと通り案内してもらったところで、「では、店舗へ戻ってお菓子の説明をしますね」と土田部長。
待ってました! 心の中で「わーい」と万歳する。
歴史的な建物を見てまわる「知的女子体験」も楽しいですが、私はやっぱりスイーツのほうがもっと好き。あぁ、これが「花より団子」ってことか?
店舗はかつての邸宅の主屋。1912年竣工の木造2階建て町屋建築です。
店内に入ると、甘い香りがふわっと漂っていました。もう食べたい。
「栗かし」と呼ばれる栗のパウンドケーキ、栗のタルト、マロングラッセ、栗のフィナンシェなど、栗を使ったお菓子のほか、和三盆糖を使ったクッキーや瓶入りのプリンなど、10数種類の商品達が並ぶ様子にうっとり。スイーツ好きにはたまらない。
お土産に何を購入しようか、かなり迷いました。だってどれも食べてみたくなるクオリティなんですもん。
ドラマちゃんと2人して迷いつつ決めたのは「音衛門の栗のケーキ(2,980円・税込)」と「明智蔵(1,620円・税込)」というパウンドケーキ。そして、お手頃価格なので購入するお客さんも多いという「和三盆糖クッキー(648円・税込)」。
足立音衛門の創業者で現オーナーの「おとえもんさん」最初に作ったのがこの「和三盆糖入りのパウンドケーキ」だそうです。そこに栗を入れて焼いた商品が「栗のケーキ」で、創業初期から愛されている逸品です。
持ってみるとずっしり重い。
「栗がたっぷり200gも入っているので、この重みが出ます」と土田部長。
自宅に戻って切ってみると、栗がギュギュっゴロっと詰まっていました。
一片を口に含めば、栗のホクっとした食感とブランデーの入った少し大人の風味が広がってゆくではないですか。優しい甘さのケーキです。
普段はあんまり食べられない高級お菓子なので、心躍る瞬間でした。う~ん、幸せ!
パウンドケーキの「明智蔵」は、洋酒に漬けたドライフルーツがたっぷり入ったケーキ。
足立音衛門本店の敷地内に新設した、その名もズバリ「明智蔵」の中で、ドライフルーツの洋酒漬けの仕込みが行なわれています。
パウンドケーキの「明智蔵」は、明智光秀フィーバーが巻き起こっている福知山土産にもぴったり。
おうちの中をちょっとムーディーにして、お酒と一緒に味わいたい逸品です。
「和三盆糖入りクッキー」はサックサクの食感。和三盆糖の柔らかい甘みが特徴的です。
これは先ほど紹介したちょっぴり大人のケーキ達と違って、小さなお子さまでも食べられそう。
子どもやお孫さんのお土産にもおススメです。
最後に、「栗のシュークリーム」を足立音衛門さんから、「栗のジェラート」をふくたん編集長からごちそうしてもらいました。
栗のシュークリームは本店限定。あ、足立音衛門さんの商品は「集栗夢」と書いて”シュークリーム”と読むのです。
「今日はなんて日だ! こんなにおいしいものを食べさせてもらえるなんて!」
私とドラマちゃん、かずちゃんの3人娘は、もうホクホク気分。
この絶妙なネーミングには、栗への愛があふれていますよね。
丹波栗の中でも希少な品種「美玖里(みくり)」のペーストを使ったクリームがたっぷり。その上に大粒の栗の甘露煮がドンと鎮座。まるで栗の”殿さま”がクリームというふかふかの座布団に腰を下ろしているみたい。
だから、なんだか徳の高い食べ物のよう。口に含めば、夢見心地になるスイーツです。
栗のジェラートは、私の中のジェラートのイメージを覆すような革命感。
栗そのものを食べているような「ほっくりとした食感と味」なのです。
足立音衛門さんの場合、栗がたっぷり使われているのはもう当たり前。
ジェラートも安心安全なものづくりをしたいという思いから、混ぜるだけのアイスミックスなどを使わず、溶かした寒天を使って固めるなど工夫をされています。これも珍しい。
栗菓子をとことん追求する足立音衛門さんならではのスイーツといえます。
食べながら土田部長にお菓子へのこだわりを聞いたところ、「とことん良いものを、人と手間をかけて作っています」と教えてくれました。
細部にこだわる仕事を丁寧に続けているので、お値段は少し上がります。でも、そうした努力や工夫を重ねていくことではじめて「愛されるお菓子」になるんだとか。
北は北海道、南は福岡県の百貨店にも進出している人気店だけど、製造や販売に携わるみなさんは、それに胡坐をかくことなく謙虚で誠実。
足立音衛門さんは、自分たちが作る商品、一緒に働く人、そしてお客さんをものすごく大切にされているんだな。そう感じて、胸が熱くなりました。
大切な人に贈るお菓子を選ぶときは、心がこもった足立音衛門さんのお菓子を選びたいと思わせてくれます。
歴史的建築物の見学では、外観だけでなく内観と貴重なコレクションまで拝見。
土田部長からは、良質の商品を届け続けるために必要な努力や心構えの大切さをお聞きしました。
その努力や工夫により生まれたおいしいお菓子。それを口にできる幸せ。
甘いものでおなかも満たされ、足立音衛門の心意気で胸もいっぱいになりながら、次のスポットへと向かうのでした。
06.ちきり屋
プチ旅的老舗せんべい屋の工場見学
100年の歴史と斬新なお菓子に遭遇!
足立音衛門を後にした2人。
次は老舗せんべい屋さんに向かいます。
おせんべい屋さんといっても、今回は「お菓子を買って食べるだけ」のプチ旅観光じゃないよ。工場を見学させてもらう予定です。
店主がおせんべいをどのような想いを込めて、どのような工程で作っているのかまでしっかり聞きます。
自分なりのテーマを設けてお店を訪ねるのもプチ旅観光のひとつの楽しみ方ですね。
足立音衛門からテクテク歩くこと約8分。
細い路地に昔ながらの町屋が見えてくる。
そう、そこが今回工場見学をさせてもらう「ちきり屋」さん。(店名は漢字の「千切屋」でも知られていますが、本文では屋号の「ちきり屋」を採用します)
歴史を感じさせる佇まいの店舗。軒先にかかる看板には「創業大正9年」と記されています。大正9年は1920年ですから、今からちょうど100年前に開業した老舗であることがわかります。
店頭にある看板には、この地域は福知山城本丸の最南端に位置し、江戸時代には「御泉水(ごせんすい)」と称される庭園があったと記されています。福知山城周辺は歴史の重みがありますね。
歴史に興味のある人はこちらをご覧ください。
▼ふくたん編集部の「プチっと解説」
福知山にも大名庭園があった?池や島、鷹部屋を配した御泉水
ガラガラガラと引き戸を開けると、目の前には「千切屋」と染められた渋い暖簾。
「福知山代表名物踊りせんべい本舗」の文字も一緒に目に飛び込んできます。
そう、ちきり屋さんは、福知山を代表する銘菓「踊せんべい」を製造販売しているお店なんです。
福知山の人に「おすすめの福知山土産は?」と聞くと、多くの人から「踊せんべいやなぁ」と答えが返ってくるほど、地元の方にも親しみのあるせんべいですね。
工場見学の前に、4代目当主の足立大介さんにお話を伺いました。
「お店と踊せんべいはどんなふうに始まったのですか?」
「初代秀雄が、現在の福知山市土師町にあった『千切屋』というお菓子屋で修行していたとき、せんべい作りを担当していました。その後、秀雄は千切屋ののれんを分けてもらい、大正9年にこの場所でせんべい屋を創業したんです」
なるほど、100年以上前に別の場所に千切屋というお店があり、そこからのれん分けして新しい物語が始まったのですね。
「踊せんべいは、地元の人から福知山名物を作ってほしいと依頼を受けたのが始まりです。秀雄は福知山の伝統文化である福知山音頭と踊をせんべいで表現しようと、全国を行脚し、名物を研究したのち、踊せんべいを考案したんです」
おおー! 福知山の名物「踊せんべい」に格別の歴史あり!
せんべいというと米を材料とし、しょうゆなどを塗って焼き上げた「しょっぱいお菓子」を想像する方が多いかもしれませんが、ちきり屋さんのせんべいはそれとは異なり、小麦粉や卵砂糖、ハチミツなどを材料とする、甘美でくちどけのよいお菓子なのです。
せんべいに福知山音頭の歌詞や、踊り手の姿、福知山城の焼印が施されています。
踊せんべいは、上と下が円盤のような形にかたどられています。「これはいったい何の形だろう?」と思っていたところ、「福知山音頭を踊るときに飾られる長提灯の形になってるんです」と教えてもらいました。
福知山音頭に関係するものを細部にまで取り込んで作り上げているなんて、まったく知りませんでした。
さて、今回は特別に工場を見学させてもらえます。
じつはプチ旅観光で訪れた2020年11月上旬、ちきり屋さんの工場は改築工事の真っ最中だったので、完成した部分だけ見せていただくことになりました。足立さんのご厚意に感謝します。
工場は2021年1月に完成予定で、窓から「焼き」や「袋詰め」の工程を見られるようになるんだとか。そうすれば、新たな観光名所にもなるかもしれませんね。
まず目に入ってきたのは、銀色の大きな機械。
こちらは、オーダーメイドのせんべいを焼くときに使う機械です。
鉄板を取り付けて、ぐるりと一周する間にせんべいが焼きあがります。アツアツ焼き立ての柔らかいせんべいに、1枚1枚焼印を押していくそうです。
「たくさんの枚数を焼いていると、焼印を押すのに手首が痛くなりそうだね~。腱鞘炎とかになりそう!」とドラマちゃん。
生半可な気持ちでは、せんべい職人は務まりませんね。
さらに奥に、踊りせんべいを焼く機械があります。写真は企業秘密でアップできませんが、重厚感のある機械を見たとき、ちきり屋さんの歴史がそこに詰まっていると感じられ、胸が熱くなりました。
足立さんは早朝4時から14時ころまでせんべいを焼き上げ、その後、包装作業に取り掛かるそうです。
作業場の温度は、夏場には40度を超えると聞きました。しかもずっと立ち仕事。うう、早朝と暑さに弱い私には厳しい仕事だ。
せんべい作りは予想以上に体力が必要なんですね。
でも、必要なのは体力だけではありません。その日の気温や湿度に応じて、せんべいの生地の調整が変わっていくので、職人はそうした変化を敏感に察知しなければならないそうです。足立さんは「早朝に目覚めたら、まず庭でその日の様子を感じます」と話してくれました。
多くの経験を積んで勘が働くようになり、はじめて商品として提供できるおせんべいを焼き上げることができるんですね。これぞ奥深い菓子職人の世界。
工場見学では、ほかにも珍しい道具を見せてもらいましたよ。
創業当時、炭であぶって1枚1枚焼き上げていたという、鬼瓦と野菜を模した焼き型。それぞれ一片が20㎝~25㎝ほどの大きさです。
こんなの見たことがない!
「人の顔より大きなせんべいが焼きあがる」と、私とドラマちゃんはびっくり。
巨大な焼き型を手にしたドラマちゃんは、重くて持ち上げるのにもひと苦労。
これを両手で持って炭であぶり続けるなんて、さぞかし体力が必要だったはず。
この鬼瓦の焼き型で焼き上げたせんべいを、ぜひ食べてみたくなりました。何かのイベントで焼いてほしいなぁと、こっそりリクエストしておきました。いつかお目見えするかな?
もうひとつ、おもしろい焼印を発見!
4代目当主と、奥様のあかりさんが結婚式のギフトとしてせんべいを焼いたときに作った代物。お二人の似顔絵焼印です。
「わっ、似てる~、かわいい~」と、私たちは大盛り上がり。
「ちょっとこれ、お二人の結婚記念日に焼いて、毎年販売してくださいよ~」とドラマちゃん。
足立夫婦は照れくさそうにしていましたが、とっても幸せそう。
この夫婦(めおと)せんべいが販売になったら、新たな名物になるかも?
ちきり屋さんでは、似顔絵のようにオリジナルの焼印を押したせんべいが作れます。
会社のロゴだったり、キャラクターだったり、アイデア次第でいろいろ。
焼印まではちょっと……という方には、食品に直接文字や絵柄をプリントできる「フードプリンター」を使って、好きなイラストや文字をせんべいに印刷することもできるんだとか。
ちきり屋さんの新しい人気商品「光秀せんべい」もフードプリンターでプリントしたもの。
老舗のせんべいと、自分で考えたオリジナルデザインのコラボができるなんて、楽しく嬉しいサービスですね。
詳細やご注文は、ちきり屋さんへ問い合わせてみて下さい。
工場見学を終え、女将のあかりさんにも話を聞きました。職人気質で寡黙な4代目当主のご主人とは対照的に、ユーモアを交えたおしゃべりが上手。
「老舗に嫁ぐとなったとき、プレッシャーなどありませんでしたか?」と質問したところ、ほっこりするエピソードを披露してくれました。
「私ね、結婚する直前まで、夫が老舗のせんべい屋の跡取りだなんて知らなかったの。聞いた後も、ふ~ん、せんべい屋なんだ~と呑気に構えてました。私の両親のほうが、『えっ、あのちきり屋さんへ嫁に行くのか!』と驚いてたくらいで。わははは~」
明るい女将さん。お話しているとなんだかこちらも元気になってきた。
ちきり屋さんでおせんべいはもちろん買ってほしいですが、4代目夫婦にも会いに行ってほしい。
100年の歴史ある踊せんべいの販売のほかに、新しい商品開発にも意欲的な4代目当主。
北海道産小豆をふっくら焚き上げた餡子を踊せんべいでくるりと巻いた「踊がさね」という和菓子もそのひとつ。
硬いせんべいをお饅頭みたいに柔らかくするとは、なんと斬新なことか!
どこからその発想が生まれたのか気になって聞いてみると、「先代がカステラ饅頭という商品を作っていて、それをヒントにせんべいを使った和菓子を発想したんです」と教えてくれました。
へえ~! 先代も斬新なお菓子を考えてらっしゃったんですね。そして、それをさらに進化させる4代目。伝統を受け継ぎながら、新しい商品を生み出す職人魂。う~ん、かっこいい。見習いたいところです!
新感覚のおせんべいアイス「福知山アイス」にも注目。これは「踊がさね」の生地に餡子ではなく、アイスクリームを挟んだもの。
足立さん夫婦は夏のお菓子を作りたいと考え、いろんな場所のアイスクリームを食べ歩いたそう。
そのなかで、2人が「これだ!」と感じたのが、洋食レストラン「あまずキッチン」(福知山市字上天津)が作っている「収穫のアイス」。
福知山の農産物を素材に使用した手作りアイスクリームで、せんべい生地との相性も良かったそう。
ドラマちゃんが実食「いがいとさっぱりしていて、食べやすい~!」
福知山の老舗日本茶専門店「山城屋茶舗」の赤鬼ほうじ茶や、オーガニック野菜農家「ミヤサイ」のジンジャーなど全部で5種類の味が選べるのもポイント。5種類全部コンプリートしたいな~。
夏はもちろん、冬はこたつでぬくぬくしながら福知山アイスを食べる。そんな楽しみ方もできますね。
ここで女将さんからちきり屋の神髄を知れるようなお話が。
「足立家の人たちは、社会貢献への意識がすっごく高いの。利益重視じゃなくって、地元のいいものを使って、地元の人に喜んでもらえるものを作りたい。そんな想いから商品が生まれてるの。お嫁に来て一番びっくりしたのはその考え方かな」
なるほど~、ちきり屋の商品開発には「とにかく喜んでもらいたい」という熱い想いがこもっているのですね。
取材しているとお店やお菓子に込められた想いを知れるので、今まで以上にファンになる。
ちきり屋4代目当主と女将さん。このコンビならこれからもどんどん新しい商品を作りだしていくんだろうな! これからのちきり屋さんに期待がふくらみます。
ちきり屋さん、取材を快く受けていただき、工場見学までさせていただき、ありがとうございました。
ちきり屋さんの住所・連絡先、商品の特長など詳しく知りたい人は下記ボタンをcheck!
福知山城周辺エリアの穴場や人気店をめぐる午後のプチ旅観光は、発見がいっぱい、手ごたえもいっぱい。
次回公開する記事が「福知山城周辺エリア」の最終回。あぁ、名残惜しいです。
では、ここでプチ予告を……。
【最終編】福知山グルメと無国籍ナイト12月18日(金)ころ公開
カヨちゃん&ドラマちゃん、また逢う日まで福知山!!
【番外編】「おみやげセレクション」 12月18日(金)ころ公開
カヨちゃんとドラマちゃんは、人気の和食料理店で海の幸・山の幸をたらふくいただき、気持ちも胃袋も「ハッピー福知山状態」に……。
その後、かずちゃんとその妹が待つ「ここはどこの国?」的な無国籍で怪しい雰囲気のお店にも行っちゃいますよ。ええ、福知山城の近くにそんなお店があるのです。
ということは、ふたたび”ほろ酔いドラマちゃん”の妄想ワールドが繰り広げられる!?
えっ、かずちゃんの妹ってどんなキャラ!?
そしてカヨちゃんは無事、丹波市まで帰ることができたの?
そうそう、【番外編】としてカヨちゃんとドラマちゃんの「おみやげセレクション」も一緒に公開しちゃいます。乞うご期待!
倉田楽 京都・福知山事務所代表。フリーの編集・ライター。美しいフォームでの「自撮り逆立ち」の追求をライフワークとする、神出鬼没で予測不能の男。